1.介護職員等処遇改善加算の導入理由
介護職員等処遇改善加算が創設された一番の理由は、日本の高齢化問題に対処するためです。
総務省の発表によると、2025年(令和7年)1月1日現在で日本の総人口は1億2355万2千人ですが、そのうち高齢者の比率は次のような結果となっています。
- 65歳以上人口: 3619万7千人(29.3%)
- 75歳以上人口: 2091万人(16.9%)
日本における65歳以上の高齢者人口は3619万人、総人口に対する比率は29.3%に達しています。
この割合は、世界で最も高い比率で過去最高を更新しているのが現状です。
一方、出生率は改善されない状況で、今後ますます介護人材が必要となりますが、実態は慢性的な人材不足の状態が長年続いています。
2.介護職員等処遇改善加算の狙い
介護職員の慢性的な人材不足を解消し介護人材を確保するため、国では「介護職員等処遇改善加算」という制度を運用し、介護職員の賃金や研修制度が構築されている介護事業者に対して介護報酬面で優遇するという支援策を実施しています。
処遇改善加算は、介護職員の給与や職場環境を改善することで、人材の確保と定着率をアップさせることを目的としています。
3. 2024年6月の「処遇改善加算制度」一本化について
下表で示すように2024年6月には、従来の3つの加算が一本化され簡素化して運用・申請しやすい制度改正が行われました。
| 以前の 加算の種類 |
賃金配分 |
| 介護職員処遇改善加算 (処遇改善加算) |
介護職員に配分 |
| 介護職員等特定処遇改善加算 (特定加算) |
経験・技能のある介護職員に重点して配分 |
| 介護職員等ベースアップ等支援加算 (ベースアップ加算) |
介護職員以外の職種の職員にも配分できる |

| 2024年6月以降の 加算の種類 |
賃金配分 |
| 介護職員等処遇改善加算 | 事業所内で柔軟に配分できる |
介護職員等処遇改善加算により支給された補助金により、次のような効果があります。
- 介護職員の処遇改善を図るための環境整備ができる
- 介護職員の賃金改善に充当できる
- 届出に関する介護事業者の事務負担が軽減できる
- 事業全体で柔軟な賃金配分が可能になる
- 利用者の負担増について理解してもらいやすくなる
4.介護職員等処遇改善加算の制度イメージ
介護職員等処遇改善加算は、4段階の加算制度になり、下記に示した改善項目を介護事業者がクリアしている段階に応じて補助金が支給されます。
介護事業所の収入をベースにして、次の加算率を追加して算出された金額が支給されます。
| 処遇改善加算申請に必要な要件 | 加算Ⅳ | 加算Ⅲ | 加算Ⅱ | 加算Ⅰ |
| 14.5% | 18.2% | 22.4% | 24.5% | |
共通 |
・加算Ⅳ相当額の1/2(7.2%以上)を月額賃金で配分
・賃金体系等の整備及び研修の実施等 |
|||
|
職場環境の改善 28項目から選択。○:7項目以上を実施。◎:13項目以上を実施し、かつ、取組みの見える化を実施。 |
〇 | 〇 | ◎ | ◎ |
|
昇給の仕組み 資格や勤続年数等に応じた昇給の仕組みの整備。 |
〇 | 〇 | 〇 | |
|
改善後賃金年額440万円 改善後の賃金年額440万円以上が1人以上。 |
〇 | 〇 | ||
|
経験・技能のある介護職員 経験・技能のある介護職員を事業所内で一定割合以上配置。訪問介護の場合、介護福祉士30%以上等。 |
〇 | |||
厚生労働省の「介護職員等処遇改善加算の全体像」より
※上表の加算率は訪問介護の場合、他の介護サービス種類別の加算率は次の通りです。
加算区分と介護サービス種類別の加算率一覧
| 介護サービスの種類 \ 加算区分 | 加算Ⅳ | 加算Ⅲ | 加算Ⅱ | 加算Ⅰ |
| 訪問介護夜間対応型訪問介護
定期巡回・随時対応型訪問介護看護 |
14.5% | 18.2% | 22.4% | 24.5% |
| (介護予防)訪問入浴介護 | 6.3% | 7.9% | 9.4% | 10.0% |
| 通所介護地域密着型通所介護 | 6.4% | 8.0% | 9.0% | 9.2% |
| (介護予防)通所リハビリテーション | 5.3% | 6.6% | 8.3% | 8.6% |
| (介護予防)特定施設入居者生活介護 地域密着型特定施設入居者生活介護 |
8.8% | 11.0% | 12.2% | 12.8% |
| (介護予防)認知症対応型通所介護 | 12.2% | 15.0% | 17.4% | 18.1% |
| (看護)(予防)小規模多機能型居宅介護 | 10.6% | 13.4% | 14.6% | 14.9% |
| (予防)認知症対応型共同生活介護 | 12.5% | 15.5% | 17.8% | 18.6% |
| (地密)介護福祉施設 (予防)短期入所生活介護 |
9.0% | 11.3% | 13.6% | 14.0% |
| 介護保健施設 (予防)短期入所療養介護(老健) |
4.4% | 5.4% | 7.1% | 7.5% |
| 介護医療院 (予防)短期入所療養介護(老健以外) |
2.9% | 3.6% | 4.7% | 5.1% |
厚生労働省の「介護職員等処遇改善加算のサービス類型ごとの加算率一覧」より
5.介護職員等処遇改善加算申請のために必要な要件とは
2024年6月に介護職員等処遇改善加算制度に一本化され、要件を満たした事業所には、さらに介護報酬額が多く支給されることになりました。
介護人材不足の解消に向けて国は本腰で改善策を打ち出していますので、介護職員の給料の引き上げを行なう事業所も多くなっています。
ここでは、介護職を目指している方、現役介護職員の方の給与に直結する内容なので、もう少し詳しく解説していきたいと思います。
5-1.介護事業所が収益を得る仕組み
介護事業所の収益は、介護保険制度に於いて介護報酬額を国が決定しており、事業所が介護報酬請求することにより、報酬を支払う仕組みになっています。
なので、お客さん(利用者)に提供したサービスの値段(介護報酬)を介護事業所が勝手に決められないというところが一般企業のサービス業とは異なる点です。
介護職員等処遇改善加算は、介護職員の待遇改善を行う事業者には、介護報酬の金額をさらに加算して支払い支援してあげようという制度です。
そのため、まず事業者は国に対して処遇改善の実施状況を申告し、国は事業所が定められた要件の基準通りに待遇改善を行っているかを確認し、基準を満たしていれば、そのレベルに合わせて介護報酬が加算されて支払われることになります。
支払われた介護報酬分で、介護職員の給料アップを図るということに流れになります。
5-2.加算算定するために必要な3種類の要件とは
では、介護事業所が達成すべき具体的な要件とはどのようなものでしょうか?
その要件には、次の3種類があります。
- キャリアパス要件
- 月額賃金改善要件
- 職場環境等要件
① キャリアパス要件とは
介護職員のキャリアアップを図り、良い労働条件で満足できる業務を行えるようにすることが目的で、キャリアパス要件は下記の5項目です。
キャリアパス要件の算定要件
| 算定要件 | 加算Ⅳ | 加算Ⅲ | 加算Ⅱ | 加算Ⅰ |
| キャリアパス要件Ⅰ(任用要件・賃金体系)
介護職員について、職位、職責、職務内容等に応じた任用等の要件を定め、それらに応じた賃金体系を整備する |
〇 | 〇 | 〇 | 〇 |
| キャリアパス要件Ⅱ(研修の実施等)
介護職員の資質向上の目標や以下のいずれかに関する具体的な計画を策定し、当該計画に係る研修の実施又は研修の機会を確保する。
|
〇 | 〇 | 〇 | 〇 |
| キャリアパス要件Ⅲ(昇給の仕組み)
介護職員について以下のいずれかの仕組みを整備する。
|
〇 | 〇 | 〇 | |
| キャリアパス要件Ⅳ(改善後の賃金額)
経験・技能のある介護職員のうち1人以上は、賃金改善後の賃金額が年額440万円以上であること。 小規模事業所等で加算額全体が少額である場合などは、適用が免除される。 |
〇 | 〇 | ||
| キャリアパス要件Ⅴ(介護福祉士等の配置) サービス類型ごとに一定割合以上の介護福祉士等を配置していること。 |
〇 |
② 月額賃金改善要件とは
月額賃金改善要件は、介護職員の賃金をアップさせるための仕組みです。
国から支給された介護報酬の一部を職員の給与などに毎月確実に支給することを法的に義務づけたものです。
目的は金銭面で介護職員の生活の安定をサポートし、介護の現場・職場における待遇改善を促進することにあります。
月額賃金改善要件の算定要件
| 算定要件 | 加算Ⅳ | 加算Ⅲ | 加算Ⅱ | 加算Ⅰ |
| 月額賃金改善要件Ⅰ
新加算Ⅳ相当の加算額の2分の1以上を、月給(基本給又は決まって毎月支払われる手当)の改善に充てる。 現在、加算による賃金改善の多くを一時金で行っている場合は、一時金の一部を基本給・毎月の手当に付け替える対応が必要になる場合がある。(賃金総額は一定のままで可) |
〇 | 〇 | 〇 | 〇 |
| 月額賃金改善要件Ⅱ
前年度と比較して、現行のベースアップ等加算相当の加算額の3分の2以上の新たな基本給等の改善(月給の引上げ)を行う。 新加算Ⅰ~Ⅳへの移行に伴い、現行ベア加算相当が新たに増える場合、新たに増えた加算額の3分の2以上、基本給・毎月の手当の新たな引上げを行う必要がある。 |
〇 | 〇 | 〇 | 〇 |
③ 職場環境等要件とは
職場環境等要件は、介護現場で介護職員が働きやすい労働環境を整えるために設けられた基準を言います。
要件をクリアするためには、次のような取り組みが必要となります。
- 資質の向上やキャリアアップ支援
研修や資格取得支援、キャリアアップの機会を提供する。 - 働き方の多様性の促進
子育てや介護との両立支援、柔軟な勤務体制の導入など。 - 健康管理対策
腰痛を含む身体の負担軽減や、メンタルヘルスサポートの充実。 - 生産性向上のための工夫
ICT機器の活用や業務の効率化を推進。 - 職場内のコミュニケーション改善
働きがいやモチベーション向上の取り組み。
以上の内容を行うことで、介護職員が安心して働ける環境を提供し、人材の定着率や介護サービスの質を総合的にアップさせることを目指しています。
職場環境等要件の算定要件
| 算定要件 | 加算Ⅳ | 加算Ⅲ | 加算Ⅱ | 加算Ⅰ |
下記一覧表の6の区分ごとにそれぞれ2つ以上(生産性向上は3つ以上、うち一部は必須)取り組む。情報公表システム等で実施した取組の内容について具体的に公表する。 |
〇 | 〇 | ||
下記一覧表の6の区分ごとにそれぞれ1つ以上(生産性向上は2つ以上)取り組む。 |
〇 | 〇 |
職場環境等要件の取組の区分・内容・要件番号
| 区分 | 職場環境要件 | 取組内容 | 要件 番号 |
| 1 | 入職促進に向けた取組 | 法人理念の再確認 | 要件1 |
| ローテンション研修の実施 | 要件2 | ||
| 地域住民向けの説明会を開催する | 要件3 | ||
| 日頃から地域と関係を構築 | 要件4 | ||
| 2 | 資質の向上やキャリアアップに向けた支援 | 外部の研修機会をフル活用 | 要件5 |
| キャリアアップの方向性ごとに人事考課の制度を構築 | 要件6 | ||
| 初心者マークの導入 | 要件7 | ||
| 定期的な面談を実施する | 要件8 | ||
| 3 | 両立支援・ 多様な働き方の推進 | 育児休暇の推進 | 要件9 |
| 職員の事情に応じた勤務のための様々な手法 | 要件10 | ||
| 職場内で積極的な呼びかけを行う | 要件11 | ||
| 管理者を複数担当に | 要件12 | ||
| 4 | 腰痛を含む心身の健康管理 | ウェルビーイング推進室の設置 | 要件13 |
| 心身の健康に関する調査を実施する | 要件14 | ||
| 職員で腰痛体操を実践 | 要件15 | ||
| 過去に対応したトラブル等を蓄積する | 要件16 | ||
| 5 | 生産性向上(業務改善及び働く環境改善)のための取組 | 業務改善活動の体制構築の手順 | 要件17 |
| 「現場の課題の見える化」取り組みの手順 | 要件18 | ||
| 担当職員が事業者を巡視 | 要件19 | ||
| 施設・事業者内/法人内ホウレンソウ(報連相)の工夫 | 要件20 | ||
| 介護ソフト導入のコツ | 要件21 | ||
| 排泄支援ロボットの導入 | 要件22 | ||
| 業務内容の明確化と役割分担を行う手順 | 要件23 | ||
| 協働化の取り組み例 | 要件24 | ||
| 6 | やりがい・働きがいの醸成 | 定例会の有効活用 | 要件25 |
| 防災訓練等の地域イベントに参加 | 要件26 | ||
| 全職員研修の実施 | 要件27 | ||
| 待遇の表彰制度を設ける | 要件28 |
1.キャリアパス要件の算定要件
2.月額賃金改善要件の算定要件
3.職場環境等要件の算定要件 についての引用元:
厚生労働省の「「処遇改善加算」の制度が一本化(介護職員等処遇改善加算)され、加算率が引き上がります」より
職場環境等要件の取組の区分・内容・要件番号
についての引用元:
厚生労働省の「令和6年度 老人保健健康増進等事業 介護職員等処遇改善加算 職場環境等要件 取組の事例集」より
介護事業所が、上記の「キャリアパス要件」「月額賃金改善要件」「職場環境等要件」で定められている基準をクリアすれば、達成レベルに見合った介護報酬が加算され支給されます。
以上が、介護職員等処遇改善加算といわれる制度です。
6.管理人コメント
異業種から介護業界への転職を目指している方、これから介護業界で働きたいと考えている方は、給与額を聞くと賃金が安いと思われるかもしれませんが、実際の賃金はどのくらいか興味があるところだと思います。
介護保険制度は2000年に施行されて25年、民間企業が介護サービズ事業に本格的に参入してから25年が経過しました。
他業種の場合、さらに長年の歴史があり、勤続年数の長い労働者も多く在籍し、勤務年数によるベースアップが積み上がっていますが、介護業界はこの仕組みが成熟していないので、平均値から賃金を比較すると見劣りするという現状がありました。
しかし、最近では、少子高齢化が社会的に大きな問題になっており、日本政府の大きな近々の課題として、介護職員の待遇改善・給料アップに関する様々な政策が発表されていますので、今後は平均給料は上昇傾向にあるのは間違いありません。
また、介護事業所側でも介護人材確保のため「介護福祉士」など介護資格取得者に対して、資格手当を賃金にプラスして支給する事業者も多く見受けられるようになってきました。
今後、介護業界としての歴史も長くなるにつれ、技能や経験が積み上がると共に、給料もアップしていく可能性はかなり高いと言えます。
現状でも、施設長や管理職などの場合は、他業種の一般企業と遜色のない待遇で勤務できるように労働条件を提示している事業者も多く存在し、50代前後でも一般企業で管理職としてマネジメントに携わってきた方が、異業種から介護業界へ転職してくるケースも少なくありません。
しかし、介護・福祉の職場は、決して楽な仕事ではありません。
待遇面の良さだけを宛にしたり、介護現場の実態や業務内容を理解せず、バイト感覚の軽い気持ちで転職する方もおられるようですが、仕事に就いてからギャップが生じ途中で挫折するケースもあります。
当サイトでは、仕事内容や資格についても介護職員初任者研修(通信)働きながら無料・安い費用で土日・夜間取得!の各ページで紹介していますので、参考にして頂ければと思います。




