利用者の要望に対し介護サービスの提供はどの範囲までやるべきか

介護サービスの提供範囲と利用者の要望とのズレ

 利用者の要望内容に対して、どこまで介護サービスを提供すればよいのかということは、以前から話題に挙がっていますが線引きしずらい問題です。

介護現場では、物や心の両面から利用者の生活の質(QOL)の向上を目指すことに注力し、介護職員は介助や援助を行います。

介護スタッフやホームヘルパーは、物質面だけでなく、利用者の精神面も考慮して介護を行う必要があり、このことが介護業務を進める上で悩みの一因となっています。

それは、精神面を考慮するには、利用者の意思や気持ちを尊重する必要があるので、物質面だけで見れば誰もが納得できる援助であっても、利用者の思いや意志などの精神面から見れば不満足というケースもあり得るわけです。

 このギャップについての事例を挙げると、次のようなことがあります。

事例1

 利用者の部屋が散らかっているので、安全や衛生面を考えるとホームヘルパーはきれいに片づけたいと思うのが普通です。

しかし、利用者の中には、「物が床に散在している方が、すぐ取れるので便利だし落ち着く。」と言い張ったりするケースもあります。

事例2

 利用者が高血圧の場合、ホームヘルパーは塩分控めの料理を作ろうと考えます。

しかし、利用者の中には、「私は味つけは濃いめでないと食欲がわかない」と主張し、食べるのを拒んだりするケースもあります。

事例3

 通常買い物をする場合、時間を有効活用するためにホームヘルパーは一つの店で買い揃えようとします。

しかし、利用者の中には、「玉葱はあの店で4個だけ、肉はこの店で豚肉300g、魚はあっちの店でさばいてもらって…」など、こと細かく注文されることも少なくありません。

事例4

 ホームヘルパーが家事援助を行う場合は、契約で決められている援助計画に記載されていることしか原則行うことはできません。

しかし、利用者の中には、援助計画で自宅の部屋の掃除のみが契約内容となっているのに、植木の手入れ、倉庫の片付け、調理、洗濯など契約内容以外のサービスを要望する利用者も実際います。

上述したようなケースに遭遇した場合は、利用者のことを考え臨機応変に対応するのか、わがままな要求と拒否し援助計画どおりに行うのか、自分で判断せずにすぐ上司に連絡し指示を仰ぐのかなど、ベテランの介護スタッフでも判断することが難しい状況に陥ることがあります。

利用者の要望と介護活動のギャップ

 利用者と介護側のギャップについて実態調査を国民生活センターが行った結果では、「介護訪問先の要望と提供するサービス活動にギャップを覚える」というホームヘルパーは30%に上ります。

その結果、このギャップを解消するために、契約上できないサービスまで行うことがあるというホームヘルパーは40%もいるという実態が浮かび上がっています。

 現状はホームヘルパーが従事する介護施設により、援助計画以外の要望事項にどの程度まで応じるかは、異なっていると思いますが、設定された援助目標に沿った援助内容であるかどうかが、これらの判断基準の大元であることは間違いありません。

介護ヘルパーを悩ませる様々な問題

 介護スタッフやホームヘルパーが抱える問題は上記以外にも様々なケースがあります。

特に訪問介護に従事するホームヘルパーの場合、利用者の自宅に訪問し、利用者と対面で、または家族が在宅の場合、利用者を含めて数人と関わり介助や援助を行うことになり、人間関係も深くなりすぎる傾向があります。

しかし、人間関係が深くなることにより利用者や家族とのつながりも強くなり介助や援助にも心がこもり、また感謝されることで仕事をすることの喜びを感じることができる点が、大きなやりがいとなって介護の仕事を支えることにもつながっています。

ですが、人間関係の深さや濃さが、逆にマイナスとなる場合もあり、お互いの関係が深すぎるゆえに、利用者と介護のプロであるという関係を忘れて、次のような問題が起こる場合もあります。

  • 家政婦と同様の扱いをされる
  • 利用者が自力でできることもやらされる
  • 家族の用事も押しつけられる
  • サービス時間内に対応できない多くの用事を頼まれる
  • 男性利用者と女性ヘルパーと1対1の場合のセクハラ問題がある

 一方、介護スタッフ側の職業意識が薄い場合は、利用者の満足感も低く、不快感を感じる人がいるのも事実です。

実態調査を行った国民生活センターのデータでは、介護サービス利用者の80%は、介護ヘルパーについて「感謝している」と回答していますが、「配慮や思いやりを感じない」「対応が雑で乱暴である」「介護知識や技術に不安を感じる」などの回答が寄せられており、不快な体験をした利用者もいるようです。

しかし、これらのトラブルは、利用者や介護ヘルパーだけに起因するものだけではなく、所属する介護施設や行政機関にもあり、介護ヘルパーの訪問計画や管理体制自体に原因があることも考えられます。

 介護事業者、介護スタッフ、利用者が共に、介護はプロの仕事だという認識と意識を持っていれば回避できるトラブルも少なくありません。

介護職=介護のプロという認識を全介護スタッフがしっかりと共有し、利用者や家族にも認知してもらえるように努力していくことが重要です。

また、訪問介護の場合、ホームヘルパーは一人きりで業務に携わるケースが多いですが、個人で問題を抱え込むのではなく、上司や同僚の介護スタッフなどと報告・連絡・相談を行いながら、直面する問題に対応し、、介護職ならではのやりがいや喜びを味わいながら仕事に取り組みたいものです。

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