食べ物をスムーズに飲み込むには前かがみの姿勢がポイントに
介護職員初任者研修の資格取得後、介護施設などに就職し業務を行う場合、食事介助は必須業務と言えます。
介護施設の利用者や要介護者が食事をする際、自分の口から食事を摂る場合には、まず口の中で食べ物を噛み砕き(咀嚼)、次に食べ物をスムーズに飲み込む(嚥下)という動作を行うことで食事が成り立ちます。
この時に誤嚥などを起こさず安全に食事を行うためには、前かがみの姿勢で食事をとれるように介護職は注意する必要があります。
では、何故前かがみの姿勢であればうまく食べ物を飲み込むことができるのでしょうか?
自分で試してみるとわかりますが、前かがみの姿勢になると、のどの位置より口の位置が下側にくるのがわかると思います。
この体勢になることで、食べ物がのどに勝手に入っていくことを物理的に避けることができます。
すると、利用者が食べ物を飲み込む準備が整った時に、利用者本人の意思で食べ物を飲み込むことが可能になるからです。
食べ物をスムーズに飲み込むために必要な3つの条件とは
人の喉(咽頭部)は、鼻から気道へ通じる空気と、口から食道へ通じる食べ物という2つの経路が交わっている部分になります。
人は食事をする際に、自分では意識していませんが、通常「食べ物の大きさ」「食べ物に含まれる水分」「鼻から肺への呼吸の一瞬停止」という3要件がそれぞれ適切に整うことで、いちいち意識せずに食べ物を口から喉へと飲み込んでいくことができます。
この3要件で、うまく食べ物を飲み込むための適度な条件とは次のような状態を指します。
口に入れた食べ物は小さすぎたり大きすぎたりするとスムーズに飲み込むことができません。
なので、適度な塊になるように噛み砕くのがスムーズに飲み込むための要件です。
例えば食パンなどを全く咀嚼せずに飲み込もうとしても喉に引っかかり、スムーズに飲み込むことはできません。
なので、水気のない食べ物は特によく噛んで唾液などで適度な湿り気を与えることも必要です。
飲み込もうとするその瞬間やタイミングを見計らい、一瞬だけ呼吸を止めて気道に蓋をすることで、飲み込んだ食べ物(食塊)がスムーズに食道に流れ込んで行きます。
上向きの姿勢は誤嚥の危険性が高い
上記で解説した3つの適度な要件が揃わない状態のとき、自然に食べた物が喉に流れ込んだ場合は、気道に誤って食べ物が流入し誤嚥を起こす危険性が考えられます。
アゴが上がった上向きの姿勢で食事をしていると、気道のふたが閉じる前に気道に食べ物や飲み物が流入する確率が高くなります。
ギャッジベッドをわずかに起こした状態やベッドに寝た状態では、必然的に上向き姿勢になってしまいます。
この姿勢で無理に食事をすると、気道のふたが閉じる前に重力の法則で食べ物や飲み物が自然にのどを通過し気道まで誤って流れ込んでしまう可能性が高く危険です。
なので、前かがみの姿勢で食事をするということは誤嚥防止に繋がる大切な要件になります。
食べ物を飲み込むための仕組みについて
- 鼻から肺に空気が出入りし呼吸をしている
□の中に食べ物が留まっている段階では、呼吸を繰り返し、鼻→鼻腔→咽頭→喉頭→気道→肺の順番で空気が出たり入ったりしています。 - 鼻から喉、□から喉がフタをされてふさがれる
飲み込む寸前は、鼻腔と咽頭は口蓋垂が上がってふさがれ、口腔と咽頭は口蓋が下がり舌がもり上がってふさがれます。 - 気道がフタをされてふさがれる
飲み込むときは、喉頭と咽頭を喉頭蓋が閉じてふさぎ気道にふたをしてふさぎますが、これを嚥下性無呼吸とも言います。 - 鼻から肺への空気の出入りが一瞬止まる
喉頭と咽頭は食べ物を飲みこむタイミングと同時に即座にふさがれ、鼻から肺へ空気が出たり入ったりする呼吸が瞬間的に停止します。