介護職員が利用者から相談を受けた際の助言・指導方法
従来は、利用者や家族から相談を受ける場合、抱えている生活上の課題を明確にし解決することを目的として、手順・やり方が考案されてきました。
相談の目的、回数、頻度、1回当たりの時間を明確にし行います。
相談に対する助言・指導に関しても同じで、相談面接形式で対応することを前提に考案され、介護現場での教育訓練が実施されてきました。
相談面接形式以外では、利用者の自宅、福祉施設の居室・食堂、医療機関のベッドなど、実際に利用者が生活している現場で行う生活場面面接による方法も行われてきました。
相談の受け方、助言やアドバイス方法など介護職のコミュニケーションスキルという観点で習得するには、この2種類の面接方法のポイントや技法を介護職スキルとしてどう活用することが望ましいかという考え方と、利用者・家族が相談やアドバイスについて何を求めているかという両視点から理解することが重要です。
介護職が相談相手として果たすべき役割
利用者からの相談に介護職が応じる際は、単に問題・課題を解消することだけが目標ではありません。
不安・心配など辛い思いや心の内を身近な存在である介護職に伝えられる良い機会でもあります。
胸の内を利用者が伝える場合は、どうしても気にかかる思いがぬぐえない状況にあることが多いのです。
なので、このようなケースでは、問題解消ではなく話を聞き取っている段階で将来トラブルにつながることを未然防止しているとも言えます。
違和感・焦燥感・怒り・寂しさ・不安・心配事など自分だけで抱え込んでいると精神的におかしくなりそうだと直観する場合、人は誰しも同じですが、一番身近に接してくれる人に相談したいと思うのが普通です。
介護職は、利用者がマイナスの感情を思いつめ最悪の事態を招く前に自己発散させることを促し、緩和する役割を担っているともいうことができます。
介護職が身に付けるべき相談技法
相談は単発で終了するケースも少なくありませんが、継続して行うことが効果的な場合もあります。
介護職は利用者からの相談に応じる際は、まず利用者の要望や考えを適切に理解・把握し、「話の聴き取りスキル」「感情表現を察するスキル」「納得と同意を得るスキル」「意欲を引き出すスキル」など相談面接スキルをフル活用して対応することが求められます。
介護職が相談を受ける場合の基本原則
バイステックという学者が示した介護職が利用者に個別援助する際の価値観が7つ提示されていますが、この内容は介護職が遵守すべき相談を受ける際の基本的態度とも言えます。
7原則 | 内容 |
①個別化の原則 (相手を個人としてとらえる) |
相手は世界に一人だけ。価値観・援助方法がパターン化していないか |
②意図的な感情表出の原則 (相手の感情表出を大切にする) |
話しやすい配慮があるか、座る位置はどうか、答えやすい質問と考えないと答えられない質問 |
③統制された情緒的関与の原則 (援助者は自分の感情を自覚して吟味する) |
自分の感情が把握できているか、感情移入しすぎていないか、目的に合わせて反応しているか |
④受容の原則 (受け止める) |
相手の考えは相手の個性、その考えのなりゆきを否定せず理解する |
⑤非審判的態度の原則 (相手を一方的に非難しない) |
常識にとらわれず善悪なく多面的にとらえる |
⑥自己決定の原則 (相手の自己決定を促して尊重する) |
結論は相手に自分で決めさせる |
⑦秘密保持の原則 (秘密を保持して信頼感を醸成する) |
個人情報を丁寧に取り扱わない人は信用されない |
「バイスティックの7原則」対人援助技術で信頼関係・ラポール形成
介護職としての利用者や家族への助言・指導方法
社会福祉士及び介護福祉士法では、介護に関わる助言や指導を利用者や介護者へ実施するという内容が業務上の責務として記載されています。
特に利用者や家族が自己の経験のみに基づき介護を実施している場合、さらなる利用者の状態悪化を招いてしまったり、介護者である家族の心身に過大な負担がかかったりするケースがあります。
このようなことが予想される場合、介護の専門知識や専門技術に基づき、特に介護福祉士はどう対処すればいいのか正式なやり方や方法などを助言・指導する役目を担っています。
一方、家族側からしてみれば、いままで創意工夫をして、自分で一番最善だと判断し介護していることについて、そのやり方は間違っているとか、こうすべきだなどとストレートに指摘されると、責任追及されているように思ったり、やり方を全否定されているように感じたりしてショックを受けることもあり得ます。
なので、助言や指導を家族へ実施する際は、直にやり方を否定したり、変更させたりする前に、なぜそのやり方になったのかプロセスを把握することが重要です。
そうすると、家族の気持ちや良い点などを発見でき、家族の思いややり方を尊重し、さらにベターな介護方法を提案していけることになる場合も多くあります。