介護職員初任者研修を受講し資格を得た後、多くの方は介護施設に従事することになりますが、施設には認知症高齢者がおられます。
なので、認知症の病状や症状、認知症の重度の判定方法などについて知っておく事も重要です。
認知症の重症度合の評価方法について
日常生活内で本人が実際にどんな行動をしているのか観察することで認知症の重症度評価を実施する方法があります。
この方法を用いることにより、認知症による障害レベルを直接本人に負担を感じさせずに評価できるというメリットがあり、テスト協力が困難な状態や聴覚や視覚障害を患っていても評価することが可能です。
ただし、評価を実施する担当者が対象者の生活状態を全て把握していることは稀で、大半は家族や介護職から状況や現状に関する情報を収集することになるので、結局は家族や介護職などの情報を提供する側がどの程度、テストを受ける対象者の状態を把握しているかが重要なキーポイントになります。
知能障害がある高齢者に対する判定基準
日常生活に於ける行動、言葉使い、態度、作業遂行能力などを基に、高齢者の認知機能の衰退度を判定します。
日常的生活能力、日常会話・意思疎通、具体的事例を参考基準にして評価は行われ、軽度(Ⅰ)、中等度(Ⅱ,Ⅱa,Ⅱb)、高度(Ⅲ,Ⅲa,Ⅲb)、最高度(Ⅳ)、メディカル(M)の5段階で評価を行います。
発現する症状・行動の例として具体的に示されている事項については、1回でも記載事項に合致する行動があったからといって即刻重視すべき評価内容として扱うのではなく、偶発的なケースも考慮し合致する行動が散見される場合や連続性をもって起こる場合に異常事態として扱うなど実際の事例別に評価することが重要です。
FAST(Functional Assessment Staging)
アルツハイマー型認知症の病状レベルを、生活機能面より分類した観察式評価尺度がFASTと言われるものです。
FASTでは認知機能の病状レベルを、障害なし、非常に軽度、軽度、中等度、やや高度、高度、非常に高度の7段階に分類しています。
認知症高齢者の日常生活自立度判定基準
認知症高齢者の日常生活自立度判定基準については、厚生労働省も提示公表しています。
日常生活自立度判定基準は、日常生活における支障に関して分かりやすく目安を具体的に提示しているのが大きな特徴で、詳細は次のようになっています。
区分 | 判断基準 | 発現する症状・行動の例 | 判定時の留意事項 |
Ⅰ | 何らかの認知症を有するが、日常生活は 家庭内及び社会的にほぼ自立している。 | 在宅生活が基本で一人暮らしも可能。相談・指導等を行い進行阻止及び症状改善を図る。 | |
Ⅱ | 日常生活に支障を来たすような症状・行動や意思疎通の困難さが多少見られて も、誰かが注意していれば自立できる。 | 在宅生活が基本だが、一人暮らしは難しいケースもあるため、昼の居宅サービス活用での在宅生活支援、進行阻止及び症状改善を図る。 | |
Ⅱa | 家庭外で上記Ⅱの状態がみられる。 | たびたび道に迷うとか、買物や事務、金銭管理などそれまでできたことにミスが目立つ等 | 同上 |
Ⅱb | 家庭内でも上記Ⅱの状態が見られる。 | 服薬管理ができない、電話の応対や訪問者との対応など一人で留守番ができない等 | 同上 |
Ⅲ | 日常生活に支障を来たすような症状・行動や意思疎通の困難さが見られ、介護を必要とする。 | 症状・行動や意思疎通の困難さが日常生活に支障をきたすレベルでランクⅡより重度で介護要状態だが終始見守りが必要な状態ではない。 在宅生活が基本で一人暮らしは難しいため夜の居宅サービス利用など各種サービスを組み合わせ在宅対応を図る。 |
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Ⅲa | 日中を中心として上記Ⅲの状態が見られる。 | 着替え、食事、排便、排尿が上手にできない、時間がかかる。 やたらに物を口に入れる、物を拾い集める、徘徊、失禁、大声・奇声をあげる、火の不始末、不潔行為、性的異常行為等 |
同上 |
Ⅲb | 夜間を中心として上記Ⅲの状態が見られる。 | ランクⅢaに同じ | 同上 |
Ⅳ | 日常生活に支障を来たすような症状・行動や意思疎通の困難さが頻繁に見られ、常に介護を必要とする。 | ランクⅢに同じ | 常時見守りが必要な状態でランクⅢと症状・行動は同程度だが、発生頻度の差異で区分し、家族介護力の経済的援助的基盤の違いにより2つの選択肢がある。
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M | 著しい精神症状や問題行動あるいは重篤な身体疾患が見られ、専門医療を必要とする。 | せん妄、妄想、興奮、自傷・他害等の精神症状や精神症状に起因する問題行動が継続する状態等 | ランクI~Ⅳ判定に該当する高齢者が、次の2つの状態にある場合は、専門医療機関での受診を勧告する必要がある。
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厚生労働省「障害高齢者の日常生活自立度(寝たきり度)pdf」より