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居住空間は本人らしさを実現する場所

介護と住み慣れた家や地域との関係

 高齢者が長年住み続けている家や地域で生活することには当然意味があります。

視覚で感じることはできませんが、住んでいる地域の雰囲気や近隣住人との人間関係が行動や心理に大きく影響し人を支えています。

 高齢者でも子どもと同居し、生まれ故郷を離れた人の中には、習慣や方言などの地域の環境や近所付き合いなどに順応できずストレスを感じているという人もいます。

 高齢者に対する介護の生活支援では、地域や普段の生活の仕方に注目し、実生活から乖離しないように生活を継続できるような介護方法を考えることが重要です。

高齢者の中でも生活に対する意欲が特に低下している場合、日常の生活状況を把握し、居心地よく感じれるような居住環境を整えることが、本人らしい生活を継続できることにつながっていきます。

居場所の確保は重要

 本来の居場所の意味は、自分らしく安心して生活できる環境が提供されている地域や住居を言います。 そのような居場所にするためには下記のような要件が挙げられます。

  • 他人から干渉されない。
  • 時間に拘束されない。
  • 自分で行動を決定できる。
  • 新しい発見や人との出会いがある。

 このような居場所にいることで、近隣住民との暖かいつながりや安定した精神状態を保てることが重要で、たとえ介護を受ける状態になった人でも同じように大切な要素になります。

 なので、生活に対する満足度や質は、居場所の有無により大きく影響してきます。

特に介護に於いては施設より自宅のほうが居心地がよい場所とも言えます。

それはプライベート空間があるからで、近年では小グループ単位のユニットケア施設が主流になり、多床室ではなく個室での介護環境が介護保険施設施設でも整備されてきています。

 このような流れにより、自宅も施設も同じような介護環境が提供され、抵抗なく普通の日常生活ができる居住環境へと移行しています。

また、施設でも生活スペースにゆとりを感じれるように、喫茶室・理美容室・面会応接室・談話室・遊戯室などを設置するところもあります。

居住環境の評価・見直し

日常生活に於ける問題点とは

 健常者の場合、目的にあった好きな電化製品や家具を購入し、自分の部屋に置いて暮らしやすいようにして生活しています。

 一方、心身機能などが加齢で低下し、要介護状態となった高齢者の場合、普段の生活で使用している浴室、トイレ、階段などがだんだんと使いにくくなってくるなど生活上の問題点が次々と発生してくる可能性が大いに考えられます。

介護職には、利用者が自立を目指して生活できるように、心身機能の程度や暮らし方を考慮した居住環境を整備し提供できるように努力することが必要になります。

居住環境に於けるICFの視点と評価・見直し

 要介護者に対する日常生活支援を行うためには、利用者の人物像・生活環境を全般的に把握・理解することがポイントになります。

居住環境のアセスメントではICFの視点で評価することが重要な要素になります。

日常生活で使用している器具や家具についの状況を把握し、生活での支障や制約が発生しないかを評価し見直すことは実際に支援するうえで重要になります。

居住環境のアセスメントのポイント
  • 環境因子
    ・自宅・施設のどちらに居住しているか
    ・浴室・トイレの設備や配置はどうなっているか
  • 個人因子
    ・生活への満足度や好みはどうか
    ・価値観、生活習慣、こだわりは何か
    ・生活史や文化的背景は何か

 心身機能などが加齢で低下し、要介護状態となった高齢者は、居住環境が良い場合は社会参加や日常活動における行動や身体機能の障害は軽減されますが、居住環境が悪く不整備である場合は様々な面で機能行動が制約されることになります。

居住環境を利用者にとって最適な状態に整備することは、QOLの向上になり、自立した生活ができるように支援することにもつながります。

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