介護職員初任者研修に参画し介護技術を学んだ介護職員は、認知症の後期段階にある利用者などの変化内容とアプローチの仕方・関わり方を十分に理解し介護をする際、適切な対応ができるようにしておく必要があります。
認知症後期段階にある高齢者などの変化に対するアプローチ方法
身体的変化に対する介護職の関わり方
認知症後期段階にある高齢者などは、運動できない状況にあるため運動不足に陥り、それに伴って食事量は減少してくるので、身体は小さくなっていきます。
そこで、介護織は利用者の個別援助計画などで、必要な栄養を摂取し体力を維持できるようにするため、次の点に注意する必要があります。
- 食事管理:
1日3食の食事がきちんと取れるように時間の確保と支援を行うこと - 排泄管理:
自然排便ができるように援助し、便秘になれば迅速に解消する処置を行うこと - 睡眠管理:
熟睡できるような睡眠環境と時間を確保すること - 衛生管理:
心地よい清潔な生活環境を保持すること
心理的変化に対する介護職の関わり方
後期段階にある認知症高齢者に対しては、密なコミュニケーションと豊富な話題や会話を交わし、なおかつ、利用者と会話するたびに「心地よい」「安心」「うれしい」「おいしい」ということを感じ、その感覚を思い起こすような言葉かけを行うようにしていくことが重要になります。
介護職は、声掛けした言葉に利用者が反応するまでじっくり待ってから、利用者のペースに合わせて介護を行っていきます。
行動変化に対する介護職の関わりと重要ポイント
介護職は、後期段階にある認知症高齢者に対して、記憶障害が原因となって起こる行動変化にも対応する必要があります。
認知症も後期段階になると、つい先ほど行った自分の動作も記憶しておくことが難しいので一連の流れとしての動作や行為を認識したり行ったりすることが困難になります。
例えば「食べる」という行為を例にあげると、
利用者は口に食物が入れば条件反射的に歯で噛んで咀嚼は行えますが、「食べる」という次のような一連の動作を行うことは難しくなります。
- 食物を認識する
- 口元まで運ぶ
- 口に入れる
- 噛み砕く、咀噌する
- 飲み込む、嚥下する
なので、この「食べる」という一連の動作を一つずつの動作に分類し、介護職はその一動作毎に声掛けを実施します。
認知症後期段階にある高齢者などに対する介護職の関わり方
心理的変化に対する介護職の関わり方
介護職は、認知症後期段階にある高齢者などは、認知障害が起因して発生する「不安」「戸惑い」「不快」という感情を常に抱いていることを理解しておく必要があります。
実際の介護を行う前に、利用者は常時このような気持ちに襲われていることを認識し、その心に寄り添うことから介護は始まります。
それから「心地よい」「安心」に繋がる声掛けや介助方法を念頭において対応・実施することが大切です。
身体的変化に対する介護職の関わり方
後期認知症の高齢者は、自ら直面している心身の不快感や状況・状態をリアルタイムで伝えることができません。
なので介護職は利用者の日々の健康状態をよく観察し、些細な表情・声の不快な変化、身体をくねらせたりする行為など、ちょっとした変化でも敏感に感じ取り、実際に利用者の心身に何が起こっているのか評価することが大切です。
行動変化に対する介護職の関わり方
心理面に対するケアだけでなく行動の変化に対し、その時々においてじっくりと寄り添えるような時間をとることが重要です。
実際、施設内における日々の介護スケジュールでは、利用者のペースに合わせた計画が立てられています。
介護職が単に合理的に介護を行えるように重点をおいたスケジュールにはなっていません。
介護職の都合に合わせていては、貴重な認知症の方の生活時間やペースを奪ってしまうことになります。
じっくり待つということを念頭に置いた介護スケジュールが利用者の「安心」に繋がるポイントになります。
場を活かした介護職の関わり方
特別養護老人ホームは、認知症高齢者が安心して生活出来るように用意された施設です。
ここでは介護職が交代で継続し介護を行うことで、認知症高齢者が途切れることなく生活することが可能な場です。
複数の介護職が担当していても個別援助計画に基づいて同レベルの介護サービスを提供できるようにすることが重要です。
交代勤務で介護を行うことで、一人の介護職に過度な負担がかからず各自介護職が精神的にゆとりを持って認知症高齢者に対応し介護を行えるというプラスの効果が期待できます。
さらに、特別養護老人ホームでは介護職だけでなく、看護師・機能訓練指導員・栄養士なども在籍しているので、介護職だけでは対応できない専門的な知識や技術を補完することが可能です。