利用者自身が他人に頼らず自分の力で自立移動できることが歩行に関する福祉用具の大きな活用効果となります。
手すリの活用法
手すりの設置は、一人で歩行は可能でも歩く際に不安定で、すぐ疲れるなどの状態の方が利用できるようにします。
手すりは、階段や廊下の壁に直接固定されているので、安定性が高く転倒予防に効力を発揮します。
手すりの設置は床面から75cm前後の高さに、手すりのパイプの直径は34mm前後にするのが適正だとされています。
歩行補助杖の種類と活用法
歩行補助杖の種類
杖には次のような種類があります。
- T字杖
- ロフストランド・クラッチ
- 多点杖
- ウォーカーケイン(歩行器型杖)
歩行補助杖の活用方法
歩行補助杖 の種類 |
活用方法 |
T字杖 | T字杖は、歩行が比較的少ない支持で可能な場合に使用され最も広く活用されている杖です。 少し肘を曲げて杖の握り手を掴み、その時の位置が大転子(骨盤内に位置する股関節、大腿骨の外側の突起した出っ張り部分)の高さになるくらいが杖の適切な長さになります。 |
ロフストランド・クラッチ | ロフストランド・クラッチは、前腕を杖の上側部分で支え、下側部分を握るという2点で支持する構造になっており、安定性が高く腕の力を有効的に使用できます。 |
多点杖 ウォーカーケイン(歩行器型杖) |
支持する面積が広い構造になっている多点杖やウォーカーケインは、杖から手を離した状態でも倒れず立ったままです。 この特性から歩行や立位の状態が不安定でバランスが悪い方の使用に適した杖になります。 多点杖は、車いすに頼りすぎ自立歩行を阻害することを防止するためにも有効活用すべき杖だと言えます。 |
歩行補助杖の役割
歩行補助杖は次のことを目的にして、杖の握り手をかたく握り持つことにより体重を支えます。
- 歩行時のバランス調整とパターン矯正を行う。
- 歩行時の耐久性と速度の改善を行う。
- 歩行時に患側下肢に全荷重(体重)をかけずに免荷(杖で足にかかる荷重を分散させる)させる。
- 使用することによる心理的な安心感
歩行補助杖の選択
各利用者の手の残存機能やどのくらい免荷できるかの度合いを考慮して杖の種類を選択しますが、次の内容に優れていることも選定する際の判断要素になります。
- 丈夫である
- 軽量化されている(アルミ合金など)
- デザイン性がよい
歩行器の種類と活用法
歩行器の種類
歩行器は、身体の周囲を囲むフレームと長さ調整ができる4本脚の構造になっており、次のような種類があります。
車輪のある歩行器
- 2輪型歩行器:
前2本の足には自由に動かせるキャスターがついており、後ろ2本にも小さなストッパー付キャスターがあるが上から荷重をかけることでストッパーが作動するタイプ - 4輪型歩行器:
本の足にキャスターがついており自由に動かせるタイプ
車輪のない歩行器
- 固定式歩行器:
歩行器を持ち上げて前進するタイプ - 交互式歩行器:
フレーム部分が可動性となっており、交互に左右の脚を前に振り出しながら前進するタイプ
歩行器の活用方法
杖よりもさらに安定性が良く支持性が高い歩行補助具が必要な状態の利用者は、歩行器を使用する方が転倒の危険性が少なく安心です。
但し、両手の機能に問題なく歩行器を立った状態でも操作できるバランス機能があることが、使用するための前提条件となります。
利用者は歩行器のフレームの中に立って,上から押さえるように体重を支え、前腕部分や手のひらで支持しながら操作し移動します。
自宅で使う時は、前進したり方向を変えるための空間が必要で、廊下の幅や部屋の大きさなどを考慮する必要があります。
歩行器の種類 | 活用方法 |
車輪付き歩行器 | 車輪付きの歩行器には4輪型と2輪型があります。
前腕支持式歩行器などは、車輪がありスムーズに動けますが安定性に不安が残ります。 なので、利用者が操作に慣れるまでは介護職がそばに付き添って転倒などの危険に備える必要があります。 |
車輪無し歩行器 | 車輪が付いていない歩行器には次の2タイプがありますが、使用するには両手の力が残っており問題なく動かせることが最低条件です。
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車いすの種類と活用法
手動車いす
歩行困難な利用者が車輪のついた椅子に座り移動できる福祉用具です。
手動車いすには、次の2種類があります。- 自走用…後輪外側に取り付けられている輪形状になったハンドリムを両手で操作できるもの
- 介助用…ハンドリムが付いておらず、介助者が操作しやすいように駆動輪を小さくしたもの
電動車いす
手動車いすでは上下肢に障害があるため自力で駆動できない人や、駆動はできても長距離移動は難しい状態の人が利用します。
また、運転免許は必要なく道路交通法上は歩行者の扱いになりますが、速度制限があり、時速6km以下で走行することが義務付けられています。
移動用リフトの種類と活用法
介護を長期間にわたり家庭内で行うケースでは、家族が腰痛になり日常生活で様々な支障が発生しています。
そこで、このよう介護負担を軽減すると同時に、利用者本人の自立度を向上させるために移動・移乗用のリフトを適切に利用することが有効な手段になります。
床走行式リフト
床走行式リフトには、手動式と電動式のものがあります。
利用者を台座や吊り具(スリング)を使用して持ち上げることができ、リフト架台にはキャスターが付いているので、手動式の場合は手で押し引きして、電動式の場合は電動で前進後進したり方向転換することにより床上を移動できます。

天井走行式リフト
天井走行式リフトには、次の2種類があります。
- 固定式:天井にレールを設置し、それに沿って移動するタイプ
- 据置式:やぐらを組み立てて中にレールを設置し、それに沿って移動するタイプ

簡易スロープと段差解消機の種類と活用法
玄関に段差がある場合、身体機能の衰えや障害がある高齢者などは、立ったりしゃがんだりする動作が難しくなります。
そのような場合、簡易スロープや段差解消機を使用することで、介護負担を軽減したり利用者の自立を促すことが可能です。
利用者も容易に外出できる環境があることで自立意欲の向上につながります。
簡易スロープ
段差解消機
福祉用具図参考引用元:
株式会社近新 「2012 Vol11-1福祉用具総合カタログ」
P85,86,120,122,125,134-136,212,223,140-145より