入浴介助方法を適切に選択するには
介護職員初任者研修有資格として要介護者の入浴や清拭を行う意味は、衛生的に保つことのはもちろんのこと、心と肉体の両方共に色々な良い結果が期待できるからです。
お風呂に入っている利用者を眺めると柔和な面持ちを見ることも少なくないでしょう。
であるがゆえに、要介護者各自の状態にマッチした、行き届いた介護を行いたいものです。
それを実現するためにも、要介護者の状況に応じた介助方法の見極めが重要だと言えます。
介護職は、入浴当日に要介護者に対し次のような内容を細かく把握・確認し、入浴方法を適正にチョイスします。
- バイタルサインなどの健康状態
- 現在に至るまでの入浴習慣
- ストーマ・胃ろう等の留置カテーテルの有無
- 病気・感染症の有無
- 意欲・要望
入浴介助を行う際の工夫・環境整備
入浴の介助に限って言えば、セーフティーでエンジョイできるアイデアや環境づくりがポイントです。
要介護者の中には、気兼ねや恥ずかしさから入浴、清拭を拒絶する人もいます。
時間を空けて、あらためて、話しかけるなど、聞き入れられるように話しかけ、入浴や清拭を行うことの大切さを認識してもらいます。
風呂場の器具が身体機能とマッチしないケースは補助具などをうまく使い、要介護者が安全で安心して快適に入浴を行うことが可能なようにします。
更には、本人のプライドを損なわないようにします。
脱衣所とバスルームに温度差が生じないように、各室内の温度にも注意します。
入浴はスタミナを消耗するので、お風呂につかる時間は5分以内に留めます。
医師や看護師とも協働し、循環器や呼吸器に関する病状に気をつけることも大事です。
それに加えて、入浴介助は、介護職サイドにしても体力を酷使するので、腰痛のリスクも大きく労力を要するため、介助のやり方・動作・姿勢などについて過度な負担がかからないように行います。
入浴介護時の事故防止について
間脳の視床下部に存在する体温調節中枢の機能により、人間の体温は、外の温度に影響されずに約36~37℃に維持されています。
皮膚表面で感じる外気温に関して、体温調節中枢が寒いと感知した際は熱産生反応が活発になり、暑いと感知した際は体内に滞留した熱を放散し体温調整を行っています。
血液の温度変化より皮膚表面で感じた温かさや冷たさなどの情報を入手できるしくみになっています。
しかしながら、年齢が高くなるにつれて皮膚感覚が鈍くなり、実際に寒い場合でも熱産生反応が活発化せず、暑い場合でも体内に滞留した熱を放散しにくくなります。
そんな理由から、高齢者など体温調節機能が衰えた年代の方は、外の気温に体温が影響されることが多くなります。
中でもバスルームは真冬でも裸になり入浴することになるので、特に注意する必要があります。
それに加えて、バスルームは、転倒したり溺れたりするトラブルが発生しやすい場所なので、入浴介助を実施する際には、服を脱いでから着るまでの一連についてサポートを行う必要があります。
入浴中の事故を防ぐための注意点
入浴中の事故を防止するためには、介護職は要介護者に対して次のような項目に留意することが大切です。
- 持病や疾患の見られる高齢者などは、入浴する際にお風呂の温度が42℃以上ある場合、血圧が上昇し、心拍数や呼吸も増えるので、40℃前後の適度な温度より少し低い温度になるように調節する。
- バスルーム内の床のぬめりやボディソープ液などで転倒したり、熱すぎるお湯で火傷をすることもあるので、十分に気をつける。
- 長時間お湯に浸かっていたり浴槽から出たときの温度差などによる立ちくらみ(起立性貧血)、熱中症、脱水症状などの意識障害に気をつける。
- 皮膚が乾いたり、多くの汗を掻いたり、尿を出しきったりすることによる血液濃度の変化に注意する。気分が悪くないか体調全般に留意する。
- 認知機能の状況に合った手順に従い入浴してもらう。
入浴中に異常が発生した場合の対応方法
入浴中の要介護者に次のような異常が発生した場合は、介護職は迅速に医師や看護師などの医療職と連携を図り適切に対応することが大切です。
- お風呂に入っている際に気分が悪くなった時は、すぐに入浴をやめて、バスルームの外に出てもらい平らな場所で横になり安静にして体調の状況を確認する。
- バスタブ内で溺れた場合は、排水栓を抜きお湯を排水し、要介護者の気道を確保するために顔を持ち上げた後、要介護者を前傾姿勢にして腰を持って引き寄せ、バスタブから引き出す。
- バスタブに浸かり身体が温まると手や足の血管が広がり、一時的な脳貧血によってめまいが発生する場合があるので、めまいがした時はバスタブから出て仰向けになり寝た姿勢で安静を保つ。
- のぼせた場合は、顔を冷やしたタオルで拭いて、気分が良くなれば水分を補給してもらい体調の状況を観察する。