介護職員から利用者への質問が果たす役割と注意点
質問が果たす役割とは
介護職員が利用者に質問を行う事で果たせる役割には、次のようなことが挙げられます。
- 過去に経験した体験や思い出を利用者が話せる切っ掛け作りをする。
- 介護を受ける際に大事な知識や情報を利用者に意識させる。
- 曖昧にしか伝達できていない内容や感情を利用者にはっきりと認識し理解してもらう。
- 自力で現状から脱皮・変容できるよう利用者を励まし切っ掛け作りをする。
質問を行う際の注意点・ポイント
介護職員が利用者に質問を行う際は、次のポイントに注意する必要があります。
- 利用者との信頼関係をいかに構築できるかが効果的な質問が行えるか否かの決め手になる。
- 適宜適切なタイミングで質問し、ことを急いでひつこく質問しないこと。
- 何回も問いただしたり、責めるように厳しく問いただすような質問の仕方はしないこと。
- 質問に答えるか否かはあくまで利用者に主導権があることを認識しておくこと。
- 介護職が期待する答えを出すように誘導したり、暗に意識させるような質問の仕方はしないこと。
質問の種類と留意点
単語で答えられる質問
単語で答えられる質問には、「はい」、「いいえ」のどちらかで答えられる質問や、簡単な単語で答えられる質問方法があります。
「ご兄弟は何人ですか?」
「部屋は熱くないですか?」
「出身地はどこですか?」このような質問の仕方を多用すると、利用者の思わくやどうしたいかという考えを制限してしまうことにつながります。
但し、短時間で状況や事柄をはっきりさせ間違いなく把握する場合は、このような質問は有効的な方法です。
相手が自由に答えられるような質問
自由に答えられるような質問方法を用いることで、相手は思うままに自由に話せるので、利用者が自分の意思で話す内容を選んで決定し答えられるようにすることができます。
「どんなことに興味がありますか?」
「現在、気になることは何かありますか?」
「この施設に来られて3年経ちましたが暮らしはどうですか?」このような質問方法は、利用者が主体になって話しを進めていくことができます。
利用者が自分の考えや感情に思いを馳せて、じっくりと考えることで、より深く自分自身や周りにいる人との関係、周辺の生活環境などを再認識できるよう促がすことができます。
二者択一で答えられる質問
選択肢が2通りしかない場合には、「~ですか?」又は「~ですか?」と二者択一形式で質問する方法が適しています。
「お迎えにお伺いするのは、9時ですか?それとも12時の方がいいですか?」
このような質問方法は、利用者が自由に答えにくい状況になりがちですが、明確な答えを引き出すには有効的です。
異なった内容を同時に尋ねる質問
それぞれ異なった2種類の内容を同時に質問する方法です。
「この施設を利用される前は何か別のサービス提供を受けていましたか?今までは身内の方と同居していましたか?」
このような質問方法は、利用者が答えずらく的確な答えが返ってこない確率が高まるため、効果的な尋ね方ではありません。
事実を上手く聞き出す質問
介護職が利用者の本音を引き出し事実を確認したい場合は、繰り返し質問することも必要になりますが、利用者が焦らずじっくりと考えられるよう時間に配慮して質問を行います。
まず今聞いている答えに共感を示して受け止め、待つという姿勢を根底に置きながら、次の質問に移っていくようにします。
焦らしたり、せかしたり、間髪を入れずに質問したりすると、「本音を引き出せたが、不快な気持ちにさせてしまった」という結果になりかねません。
決してこのような質問の仕方はしないように注意することが必要です。
価値判断を押し付ける質問
価値判断を押し付ける質問とは、介護職の考えや価値観基準にして、強制的に誘導するような質問方法のことです。
「明日、施設入居者のほぼ全員が参加される祭事を行いますが、Aさんは何か別に用事があるのですか?」
このような尋ね方は、「参加するのが当たり前」という介護職の自分勝手な考えを基準にして、質問しています。
これでは、利用者は、本当に参加できない事情があった場合でも、はっきりと言いずらい状況に追い込まれることになります。
介護職は、質問前から「この利用者はこれまでも全く行事やレクレーションに参加しない」というマイナス評価を基にして質問を行っています。
このような相手の評価を自分勝手に決めつけ、気持ちや事情を無視して、自分の考えや価値観を一方的に押し付けるような尋ね方は、利用者の心を傷つけ信頼関係を損なわせることになっていきます。
また、利用者は高齢の目上の方が多いので、このような行為は人としても大変失礼に当たりますので、決してやってはいけない事で人間関係が悪化するだけです。