介護職員初任者研修や資格取得した介護職員は、認知症の中期段階にある利用者などの特徴や身体的・精神的・行動での変化をよく認識し介護の実務で対応できるようにしておく必要があります。
中学校の先生として教職に就き29歳で結婚し1男1女の子供を持ち仕事を継続していた。
夫は働き盛りの44歳で死亡したが、その後も自分一人で息子たちを養育してきた。
中学校教諭という立場上、生真面目で規則正しく道筋のそれたことは許せない性格で、生徒や息子にも厳しいかった反面、誰にでも優しく接するので多くの人から慕われていた。
7年前より認知症の兆候があり、デパートのレジで支払い計算ができず自分のふがいなさにイラつくことが多くなってきた。
こられが原因で近隣との揉め事が多くなり一人での生活が難しくなり長男の要望でグループホームに入居することになった。
教職を通じて生徒などに教えたり導いたりすることで、子供たちが成長していく過程に喜びと誇らしさを感じていた。
現在も卒業した多くの生徒が会いにきており、大変慕われていたことが推測できる。
他人からいろいろと頼りにされたり生徒などに慕われたりすることで自分の存在価値や生きがいを見出していた。
中期認知症高齢者の生活環境の特徴
グループホーム、介護保険施設、特定施設などが中期認知症の高齢者が生活する場の中心となっています。
介護保険制度上に於いては、地域密着型サービスの一種である認知症対応型共同生活介護として認知症高齢者グループホームが該当します。
認知症高齢者グループホームには、介護施設での各種職員、入居者、その家族たち全員の協力と相互理解に基づき、近隣及び地域の住民たちとのつながりや関わり、人間関係があります。
平穏で安心した生活を送れるように入居者同士が協力し合い、地域住民と密接に関わりながら、日々、時々の出会いを大切にして生活を送っています。
リロケーションダメージを軽減するために、入居者が自宅で使用していた家具などを居室に持ち込み、共同部屋ではなく個室となっており特に生活様式や環境に関してはキメ細かな配慮が施されています。
中期認知症高齢者の中期段階における変化
認知症の高齢者からすれば、現在に至っては中核症状が原因の記憶障害や日々の生活の内において以前は容易に実践できていたことが理解できずやり方もわからなくなるなどの症状が現われます。
そのことが原因で行動・心理症状(BPSD)が現れ、介護職自身の肉体的、心理的負担は増大していきますが、これは介護職自身のいろいろな周囲環境が大きく影響してくると推測できます。
認知症高齢者の言動や症状を観察し、いったい本心は何を訴えているのか、BPSDの背景とその原因をじっくりと見極め、生活環境を整備していくことが重要です。
認知症の中期になると次のような症状が現われてきます。
- 他人が突然自宅に上がり込んできたなど、せん妄で興奮状態になる。
- 鏡に写っている自分に向けて語りかけたり怒鳴ったりすることもある。
- 施設内を目的もなくウロつくこともある。
- 失語が原因で自分を上手く表現できず苛立ち暴力や否定で表現することもある。
中期段階の認知症高齢者などは、不安定な歩行が顕著になりバランスをくずす事も多くなってきます。
感覚性失語の影響で、時々に対応した適切な言葉がしゃべれず、相手が話している言葉をよく理解できない症状も現われてきます。
また、便所に行かずに失禁や放尿などを自分の部屋内で行ってしまうこともあり、こうなると身体介助をしていかざるを得ない状況になります。
高齢者の心理・精神面にも肉体的な変化は大きく影響するようになります。
相手の話や言葉の意味がよく分らず、話しかけられても的確な言葉で返事ができず、常にイラつき機嫌が悪く、物事に対して被害妄想を抱き、話しかけても返事をせず拒否することも多くなってきます。
生活の場に関しては、心理面で常時不安が付きまとっている状況なので、外部からの様々な刺激や情報に対しても、どのように対応していいのか判断できず、精神的に混乱することも増えてきます。
家族などは、このような認知症高齢者の変化に対し、「以前は意思疎通も上手く行っていたにも関わらず、考えてもみない言動に、どういったやり方で対応してよいのか」と困惑し、この先如何なる状態になるのであろうか心から頭を悩ますことにもなります。
認知症高齢者のBPSDの状態や傾向をしっかりと把握し、具体的な対処法や適切なアプローチ方法を介護職は探り考えていく必要があります。