介護士・ホームヘルパーは「その人らしい生活」ができるように導くプロ
ホームヘルパーに求められる真の役割とは何か、次に具体的な事例を挙げて考えてみましょう。
端的にいうと、自立した生活を営めるように、介護を必要とする利用者に対して、援助し手助けをすることがホームヘルパーに求めらえていることです。
自分自身の普段の生活を振り返れば理解できると思いますが、自立した生活とは利用者が今まで通り生活の質を維持し、その人がその人らしく生きるために必要な行為をいいます。
夜になると寝て、朝起きると歯をみがき、食事をし着替えをして仕事に行く。
トイレにも行くし、用事があれば外出もし、仕事から帰れば入浴やシャワーで汗を流す。
これらは特別意識することなく、人間らしく生きるうえでみ皆が欠かせず行っている行為ですが、何らかの障害を身心に抱えていれば、この当たり前の行為を自力では行なうことは困難になります。
もし、これらの行為ができない場合は、「どうしたらいいか」ということを考えるようになるはずです。
お風呂に入れなければ身体を拭くだけにしよう、トイレができなければオムツをしよう、着替えができなければ、同じ服装で当分暮らそうなど、もし、自分が同じような状況になった時に満足して生活できるでしょうか。
大多数の人が今まで通りの生活を送れているとは思えず、健康だった時に生活に戻りたいと願うはずです。
では、健康だった頃の生活を再現するためには、どうすればいいのでしょうか。
介護士・ホームヘルパーは「お手伝いさん」とは違う
健康だった頃と同じような生活環境を再現するには、自分だけではできません。
必ず他人の協力や不自由な身体を補助できる用具が必要です。
トイレに一人で行けなければ、ポータブルトイレをベッドの近くに置いて、カーテンで仕切りをして用を足すというようにすることが出来ますし、自力で歩行できなければ、車椅子や杖を使って移動するという手段があります。
このような福祉補助用具が、手足の代わりとなるわけですが、まだまだ自分らしい生活を送れていないと感じる方もいると思います。
車椅子を使用する場合、移動はできますが移乗するまでが大変で、時間も労力もかかるという人もいるに違いありません。
頼れる家族がいる方はいいですが、現在のように家族が少ない家庭では限界があります。
そこで、道具ではなく介護士・ホームヘルパーという人の手が必要となってくるわけです。
その人がその人らしく生活することができるよう、どのタイミングでどのような援助をすればいいのか、プロフェッショナルな立場で見極めながら介助を行なうことが介護士の役割になります。
よく家政婦とホームヘルパーを、同じような仕事だと思っている人がいますが、両者は役割が大きく異なります。
単に家庭内の生活の手伝いをするのがホームヘルパーの仕事ではなく、利用者ができることは自分で行い、自立した生活ができるように手助けするのが一番の役割になります。
利用者が自立した生活をおくれるようにするには、「利用者の心身の状態」「利用者が希望としている生活環境」などを把握し、手を貸すべきタイミングと見守るべき状況を見極める能力が求められます。