ボディメカニクスを活用するには
ボディメカニクスとは何か?
神経・筋力・骨格・関節の各系統が相互に連携し合うことができなくなり、どこかに支障が発生すると、自分の思うとおりの動きが正確にできなくなり運動機能が正常に働かなくなります。
ボディメカニクスとは、以上のような身体機能の諸系統の相互関係を総称したものです。
ボディメカニクスの基本原理について
介護職は介助を行う場合、ボディメカニクスの基本原理をしっかりと理解しておくことが重要です。
1.身体は広く支持基底面積を確保するほど安定する
介護職は左右、前後に両足を広めに開くことで支持基底面積を広くとることができます。
2.介護者と利用者はお互いの重心を近づける
介護者と利用者間の互いの重心を近づけるほどスムーズに移動を行いやすくなり、密着させると力もほとんどいりません。
3.全体の筋肉群を使用して移動を行う
腕などの一個所の筋肉だけに力を集中させるのではなく身体全体の筋肉に分散するようにします。
4.体はできるだけコンパクトにまとめる
ベッド上で寝返り移動する場合などは、利用者の腕を組んだり膝を立てたりして、コンパクトにまとめることができれば、利用者とベッドの摩擦面積を少なくすることで、力の分散を防ぎ容易に移動することができます。
5.移動の場合は手前に利用者を引く
引くほうが押すよりも力が分散せず、少ない力で動かせます。
6.利用者を動かす際は重心移動で行う
背筋を丸めず真っすぐに伸ばして、重心移動する方向に足先を向け、膝の屈伸を利用して重心を移すようにすると骨盤が安定し、スムーズに移動できるので腰を痛めることがありません。
7.不自然に身体をねじらない
脊柱をねじったり曲げたりして不自然な状態になると不安定な姿勢になり、力をスムーズに発揮できなくなるだけでなく腰痛を発症する原因にもなるので、できるだけ腰と肩は平行に保ち動かすようにします。
8.てこの原理を利用して動かす
小さい力を大きい力に変えることができる支点・力点・作用点などのてこの原理を利用します。
膝をベッドサイドに押しつけ、てこの支点にすれば、小さい力でも効率よく動作することができます。
姿勢・重心を安定させるには
重心の位置
人が身体を動かす場合は、必ず重心を移動させながら行っているので、介助する際も身体を動かす場合には、重心移動を意識しながら行います。
通常、立位で静止している時は、へその下部あたりにある第二仙骨の高さに重心があり、運動している時は、重心が前後・左右・上下と移動しています。
重心の高さ
通常時の重心の高さは、身長に対して床面から50〜60%くらいの高さにあると言われていますが、物を持った場合や人の体型やその時の姿勢などにより異なります。
介助を行う場合に一番重視することは、姿勢を安定させるようにするということです。
姿勢は低いほど重心の位置が安定します。
立位の場合、腰を低くし両足を開いた状態で少し膝を曲げて介助を行うほうが、姿勢の安定性は高まりますが、腰を上げたり、両手を上げた状態で介助を行うと、重心が高くなり姿勢が不安定になります。
不安定な姿勢で介助を行っていると過剰に背中や腰に負担がかかり、腰痛を発症する大きな要因になります。
重心線
立位で静止している時は、耳からくるぶしを結んだ直線上に重心線があればバランスがとれている状態で、移動するときもこの直線上の軸が一列に揃うようすれば、バランスがとれた状態を維持することができます。
移動・移乗介助に於ける介護職の役割
人は高齢期になると慢性疾患により心身の機能低下を起こし、それが原因で廃用症候群を発症するケースも多くなります。
なので、介護職は利用者を廃用症候群で寝たきり状態にさせないような予防方法を工夫をしながら介護を行うことが必要です。
また、利用者の障害の程度に見合った福祉用具を活用し、円滑に日常生活が行われるよう移動能力を補える工夫をして、生活の行動範囲をより広げれるように努力することが求められます。
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