旧資格になるホームヘルパー2級講座の学習カリキュラムでは、施設での介護実習が資格取得の必須条件でしたが、初任者研修のカリキュラムでは任意となりました。
現在では希望すれば施設実習を体験できる初任者研修もありますが、実施してない講座も多くなってきました。
施設実習では、初任者研修などで学んだ介護の知識や技能を、介護施設などの現場で実践し実際の仕事を体験します。
実習内容は一般的には次の3つで行われ、施設実習の日数はトータルで2日から3日程度が多いようです。
- 入居介護施設での介護実習
- 通所介護施設での介護実習
- 訪問介護へ同行しての介護実習
1.介護現場での実習場所と実習時間
旧資格であるホームヘルパー2級の現場実習カリキュラムを参考に紹介すると、次のような内容になり疑問やわからないことがあれば先輩ヘルパーに質問を行います。
- 訪問看護ステーション
- 在宅介護支援センター
- デイサービスセンター など
- 施設実習:
2日間で計16時間(特別養護老人ホーム、老人保健施設などでの介護実習) - 在宅同行:
2日間で計8時間(在宅介護サービスの同行訪問) - 施設見学:
1日間で6時間(デイサービスセンター、在宅介護支援センターなどの現場見学)
- 基本の介護技術やコミュニケーション法などの実技体験
2.介護現場での実習にあたって心得ておきたいこと
次の4点について介護施設や訪問介護の実習にあたっては、心得ておく必要があります。
- 時間厳守
遅刻は当然厳禁ですし、当日の集合場所には、5~10分ほど前には到着するようにします。 - 身だしなみ
清潔で動きやすい服装であることが大原則で、派手な恰好や奇抜な色彩の衣服は着用はせず、アクセサリーなどもしないほうが安全です。 - 言葉使い
ほぼ目上の方ばかりなので、名前を呼ぶ場合は「〇〇さん」で、言葉の語尾も「~です。」と敬語で会話するのが基本です。 - 実習の目的
成り行き任せではなく、自分が実習で学ぶべきポイントは何かを事前に明確にした上で、現場実習に入るようにしましょう。
3.介護施設での実習内容
施設実習では、老人保健施設、特別養護老人ホーム、身体障害者施設、肢体不自由児施設などにおいて、施設の役割を理解し、実際の業務を体験し実習を通して介護技術を学んでいきます。
3-1.入居介護施設での介護実習
入居介護施設での実習場所は、介護老人福祉施設(特別養護老人ホーム)、介護老人保健施設など介護が常時必要な高齢者が入居している施設で、実際の利用者を相手に介護を行ないます。
当然ですが、介護職の初心者が現場に突然入っても戸惑うことになるので、オリエンテーションが事前に必ず行なわれます。
現場実習では介護職員が指導役となりその指示に従って食事介助や入浴介助など施設の介護職員が行っている業務を体験します。
- 介護老人福祉施設(特別養護老人ホーム)
- 介護老人保健施設
- 身体障害者療護施設
- グループホーム など
3-2.通所介護施設での介護実習
通所介護施設での実習場所は、自宅から通所して介護サービスを受けるデイサービスセンターや訪問看護ステーションなど訪問介護以外の在宅サービス施設になります。
ここでは、デイサービスセンターなどが果たしている役割や利用者への支援の仕方を見学したり、実際の介護サービスの実務を体験します。
- デイサービスセンター など
4.訪問介護へ同行しての実習内容
訪問介護へ同行しての介護実習では、利用者宅へ現職の介護スタッフに同行して訪問し、実際の在宅介護業務を見学・体験します。
利用者の生活の質を維持したり自立を促すことができるような介助方法や援助方法などを学びます。
先輩介護ヘルパーに同行しますが、面識のない他人のお宅ですから、目のやり場にも注意したいものです。
初めて他人の家に来て辺りをジロジロ見回ることは行儀のいいことではありませんが、観察するという意識を持って見ることは大事です。
家庭や生活の状況、援助の仕方、介護サービスの効果や有効性、施設介護と訪問介護とは何が違うのかなど、視覚も聴覚もフルに働かせ、在宅介護という仕事を様々な視点から把握し理解するように努めましょう。
5.介護現場での施設実習・訪問介護同行を体験することのメリット
初任者研修では、施設実習ができるスクールもありますが、参加は任意となっている場合もあります。
ですが、できる限り参加する方が施設実習で実際の介護現場を体験できるので、自分にとってプラスになるのは間違いありません。
自分で見聞きしなければ、実際わからない事も多くあるので、就職前の介護施設実習や訪問介護同行などは貴重な体験の場とも言えます。
施設実習を体験できるスクールを受講することにより、次のようなメリットを感じることができます。
- 介護される側とする側、双方の気持ちや考えなど、現場の実態を肌で感じることができる。
- 介護現場を体験することで、介護職に対するやりがいなどを実感できる。
- 介護現場でしかわからない方法も体験できるので、職場ですぐに実践できる介護技術が学べる。
- 実用的な介護方法も観察できるので家族介護にも役立つ。
- どのようなタイプの介護職種が自分に向いているか検討するための判断材料とすることもできる。
- 現場の雰囲気や業務内容を理解することで、長続きする職場を探す際の参考にすることができる。
- 就業前の不安や疑問を解消できる機会を得ることができる。
- 就職時、採用側(介護施設)と求職側(あなた)とのミスマッチを避けることに繋がる。
- ミスマッチにより発生するであろう無駄な就活時間や手間を減らすことができる。
6.旧 ホームヘルパー2級からの変更点は?
現在の介護職員初任者研修に相当する以前の資格はホームヘルパー2級です。
ホームヘルパー2級から介護職員初任者研修に資格制度が変更になった為の大きな相違点として、初任者研修の場合は施設実習が必須ではなくなったということです。
介護施設での現場実習が必須ではない代わりに、介護技術演習がホームヘルパー2級では42時間であったものが介護職員初任者研修は75時間に大幅に拡大されました。
資格 | 施設実習 | 介護技術演習 |
ホームヘルパー2級 | 必須 | 42時間 |
介護職員初任者研修 | 必須ではない | 75時間 |
上表のような変更は、介護の知識と技術を高いレベルで習得させるという意味では悪いわけではありませんが、 施設実習が必須ではなくなったということによって、次のような点も不安視されます。
7.施設実習に対する介護施設採用側の視点や考え方
介護職の求人募集を行っている介護事業所や施設の採用者側の思惑としては、次に該当するような人で自分の適性についてもある程度理解している人を採用したいと考えている場合が多いようです。
- 介護の知識だけでなく介護技術の基礎を身に付けている。
- 介護施設や在宅訪問介護などの何らかの現場体験をしたことがある。
その理由は、介護職員初任者研修を通じて介護技術の基礎をしっかりと学び、現場実習の体験を通して、どんな介護職種であれば自分にできるのかという方向性を固めた求職者を優先したいですし、そのような求職者は定着しやすいと考えているからです。
逆にいえば、施設実習すら体験していない人は介護現場のイメージがつかめず向き不向きも曖昧で、ミスマッチの危険性があり、せっかく採用しても就職してから辞めてしまうかもしれないという不安があるようです。
8.施設実習に対する求職者側の視点や考え方
介護職に就きたいと考えている求職者側からすると、介護の知識や介護技術の基礎は介護職員初任者研修でしっかりと学んでいると思います。
但し、現場の施設実習などを体験せずに就職先を選んだ場合、介護サービスの職種は様々なので、その職種が本当に自分に合っているかどうかを見極める判断が難しいかもしれません。
数日間でもいろいろなタイプの介護現場を自分の目で見たり体験しておくことで、どのようなタイプの介護の職種が自分には向いているかをイメージできると思います。
現場体験なしでは、採用者側も現場の雰囲気さえも全く知らない人を採用することになり、ミスマッチングに繋がる可能性もあります。
また、介護士を目指している人だけでなく、家族介護が目的の方も現場実習を通して、介護側の考え方や実際の介護方法を客観的に見つめることができるので家族介護にも役立ちます。
介護職員初任者研修では介護施設での現場実習が必須ではありませんが、スクールによってカリキュラムに組み込まれているところもあります。
希望者にはオプションで現場実習を体験できるように用意しているスクールも多くありますので、今後のために体験してみたいと思われる方は検討してみるのもいいと思います。