嚥下障害の状態を確認し、程度に応じた嚥下食で介護を行う
嚥下障害を患っている要介護者の場合、本人が自分では食べ物を飲みこんだと感じている場合でも、食物がのど(咽頭)に溜まって残っており、ベッドで横になり寝ている最中に逆戻りして誤嚥性肺炎が誘発される可能性があります。
なので、のど、食道、胃まで食べ物が流れていくための通り道である狭い消化器官をスムーズに食べ物が流れていくように、固さや流動性を考えた嚥下食をつくり、介護職は利用者に不慮の事故が発生しないように対応することが重要です。
嚥下障害の程度を介護職が把握する手段としては、一番重症な嚥下障害を想定して、最初にお茶ゼリーや1.6%濃度のゼラチンゼリーを使用して確認するのが安全です。
お茶ゼリーだと重症でも一番飲みこみやすい状態なので、ここからスタートし、クリアできれば少しづつ固さや流動性のない食事へ移行していけるようにしていきます。
介護職は、嚥下食を調理する際には食材の調理の仕方にも工夫と配慮が必要です。
例えば、お米からお粥をつくる場合、温かいお粥は流動性があり安全ですが、冷えてくると粘り気が生じのどにくっつきやすくなり、誤嚥をおこしやすくなります。
そういう点では、ゼラチン粥の方が冷めてものどにくっつかず飲みこみやすいので、正しい調理方法を理解しておくと介護職として食事介護を行う際には大変役立ちます。
嚥下障害の状態簡易確認法
介護職は、次の段階を踏んで利用者の嚥下障害の程度を確認していきます。
嚥下障害の程度 | 確認方法 |
段階1 | 水3mlをスプーンで飲ましてみる |
段階2 | お茶ゼリー又は1.6%濃度のゼラチンゼリーを食べさせてみる |
段階3 | 市販のプリンを食べさせてみる |
段階4 | 市販のヨーグルトを食べさせてみる |
段階5 | とろみ茶又は市販のお粥を食べさせてみる |
段階6 | 一口大に切ったじゃがいもをやわらかく煮たものを食べさせてみる |
嚥下障害者の程度の確認方法としては、嚥下内視鏡や嚥下造影によるチェック方法が多く用いられていますが、訪問介護など利用者宅で介護を行う場合は簡易で上記の食材を使用してチェックを行います。
スプーンで3mlの水を飲ましてもむせたりしなければ、薄く切ったお茶ゼリーを食べてもらい、これも大丈夫であれば、市販で購入したプリンヘ、ヨーグトへと順次試して行きます。
嚥下障害に対応した調理方法
ゼラチンゼリーの基本的な調理方法
- 0.3Lのお茶又はジュースにゼラチン5gを混ぜる
- 鍋のふちまで泡立った状態になれば火を消す
- 粗熱を除去し容器に小わけする
- 冷蔵庫内でで24時間冷やす
- 小分け容器から皿に移した状態で左右にゆするとブルンブルンとゆれる程度の固さであればOK
ゼラチン粥の基本的な調理方法
ビニール袋で調理(真空調理)
- 水1、米5、ゼラチンは水の2%の割合でジップロックなどの耐熱性厚手ビニール袋に入れる
- ビニール袋の空気をストローを使って吸い出す
- 95度の温度でビニール袋のまま30分間ゆでる
- 火を止めて20分間放置する(量が多い場合は、袋の状態で冷凍保存もOK)
鍋で調理
- 水1、米5の割合で煮る
- 米が煮えたら水の2%の量のゼラチンを鍋に入れヘラでよくかきまぜながら加熱する
食材により調理方法を工夫する
水・お茶 | 野菜 | 卵 | |
飲み込みにくい | 嚥下障害がある場合は一番飲みこみにくい | 野菜を小さく切った状態のものは誤嚥しやすい | ゆで卵も固い状態のものはのどに詰まりやすく、むせやすい |
比較的 飲み込みやすい |
流れ落ちるくらいのとろみを付けるのがポイント | ーロ大に煮て熱く柔らかい状態のうちに押しつぷすのがポイント | 茶碗蒸しの状態にすれば重い嚥下障害がある人でも飲みこみやすくなる |
一番 飲み込みやすい |
重い嚥下障害がある人でも1.6%濃度のゼラチンゼリーなら飲みこみやすい | ゼラチンにだし汁を足して一緒にミキサーすれば飲みこみやすい | 白身・黄身とも半熟状態の卵は飲みこみやすい |
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