福祉の基本について
福祉の基本はノーマライゼーションとQOL
生活に困窮している個人に福祉を施し救い出すという活動の多くは、以前は世界中どこの国でも慈善団体や宗教団体が担っていましたが、その後、時代の変化に伴い、人々を福祉施設へ収容し保護するという流れに移行していきました。
日本も同様で、福祉を必要とする人々を収容するために郊外に大規模施設が建設されていった時代もありました。
福祉活動による支援は1960年代に入ると、施設から在宅に重点が移りノーマライゼーションという考え方に基づいた福祉支援が世間に広まっていきました。
それ以前は、健常者を基本として社会環境が構築され、障害者側がその基準に合わせて生活するという事が一般的でした。
ですが、QOLを中心とした介護・福祉では、社会より個人が重視され各個人の生き方や価値観を尊重して、自分らしいライフスタイルで安心して生活できるという事に重点が置かれています。
現在では高齢者や障害者に提供されている医療サービスや介護サービスは、全てQOLの理念に基づいて行われるようになりました。
ノーマライゼーションとは
施設に収容して福祉提供するのではなく、地域全体を快適に住めるようにして、障害者や健常者に関係なく、誰もが安心して普段通りに生活できるような社会環境を整えていこうという理念です。
QOL(クォリティ・オブ・ライフ)とは
QOL=生活(人生)の質、と解説されていることが多く、日本では1970年代の初期頃から世間で認知されるようになりました。
現在の福祉の基本理念は自立支援
現在は、自立支援が福祉サービスを提供する場合の基本原則です。
他人に一切手助けしてもらうことなく自分の力だけで生活するということが、自立という言葉の意味ではありません。
たとえ手助けが必要な高齢者でも、あくまで自分の考えや意志に基づいて行動したり、物事を選択して自分らしく生活していくということが自立の本来の意味になります。
介護を行う場合は、ノーマライゼーションとQOLを行動指針として提供し、福祉とは、これらの活動を強力にサポートしていく社会的仕組みを指します。
本当の福祉社会とは、支援を必要とする人が適切なサービスを受けることができる社会をいい、個人の選択の余地がなく一方通行で一辺倒なサービスを与えるような社会ではありません。
医療・介護・福祉の各分野によるチームケアが重要
現在は高齢者が急増し、ニーズも多様化しているため、支援には様々な領域のスタッフが関わっています。
このようなニーズに対応するには、介護・医療・福祉に関わるスタッフが個別に対応するよりも、サービスに必要な分野の専門職スタッフが連携しチームを組んで、1人の利用者と総合的に関わってこそ、詳しく状況も把握できて、きめ細かなサービスを適切迅速に行うことができるようになります。
チームを組んでケアを行う場合は、利用者と最も身近で時間的にも長く接しているホームヘルパーが、チームスタッフと利用者との仲介役を担うことになるため、円滑にサービス提供を行うための重要なポジションにあるといえます。
ケアサービスの基本について
利用者の自立生活を支援するのが介護の目的
自分らしい暮らしができるかどうかは、どれだけ自分でできることがあるかということと正比例しています。
利用者本人が出来ることには手を出さず、今以上にできることがないか検討し、さらに増やしていくことを考えながら進めていくのがケアサービスの基本です。
これは単に静観するという事ではなく、寄り添って見守り、場合によってはいつでも助けられる態勢を取っておく必要があります。
利用者本人が気付いていなくても他にできることがないかを一緒に探してみたり、積極性や自立心を引き出せるように働きかけていくことが大切です。
手助けしすぎるのは自立支援という観点からするとケアの妨げになるため、決して本人ができることを減らさないようにするのが最良のケアとなります。
家族が介護者となっている場合は、身内ということで利用者の甘えもあり、この手助けしすぎないように介護するということが難しいケースが多くあります。
そこで介護の専門家であるホームヘルパーが関わることで、利用者の甘えや情に流されずに、自立支援を基準とした介護に徹することが可能になります。
介護の目的は利用者の自立心や意欲を引き出すこと
まず、利用者が自分でやってみようという意欲を持てるように支援していかないと、できることは増えていきません。
生活援助をする中で、上着に手を通す、くしで髪をとく、という事だけでも自分でやってもらえるようにしていくと、しだいに外出意欲が湧き出歩くことで身体機能が改善されたという事例もあります。
医学的な治療やリハビリではなく、自立心や意欲を引き出すことでも心身に大きな影響を与え、利用者の生活を豊かにできるのもホームヘルパーならでは仕事といえます。
利用者の意志や要望を引き出すような介護が必要
高齢になると遠慮する方が多く、自分から要求することが少なくなり、言われたり示されたりした場合でも無条件に同意してしまう方もいます。
世間で例えるならイエスマンやお任せ状態が増えてくる傾向にあります。
なので、介護側のホームヘルパーは、このような高齢者の心理特性を考えて、本心ではどうしたいと思っているのかを言い出しやすい雰囲気を醸し出す努力も必要です。
例えば、調理の家事援助をしている場合、今まで卵料理が一番好きといっていた高齢者に、「今日は違う料理を作ってみましょうか?」と言って、煮込んだ豚汁をつくってあげると、すごく喜んで美味しそうに食べ全部平らげたそうです。
すると、今まではホームヘルパーが考えた献立に何も言わずに食事をしていた人が、自分から今日はあれを食べたいこれを食べたいと言ってくれるようになったという事例があります。
このような事例から、他人に迷惑をかけたくない、他人に頼りきりになりたくないという高齢者特有の心理状態を垣間見ることが出来ます。
利用者の生活スタイルを理解し押しつけの介護はしない
人生経験が長い高齢者は、それぞれ個人特有の生活習慣が身についており、食べ方やお風呂の入り方に至るまでスタイルが異なります。
一見すると手間がかかり面倒だと思われるような事でも、生活習慣は合理性という観点だけで割り切れるようなものではありません。
合理的でなかっても本人が一番落ち着くスタイルなので、無理にやり方を変えさせたり、常識を押し付けたりせず、安全性に問題がない限りは本人のやり方を尊重するべきです。
介護を行う場合は、本人の意見や価値観、習慣を含めた生活スタイルを尊重することが基本原則ということを介護職は肝に銘じておきましょう。