介護職員初任者研修で介護の勉強を行い実際の介護現場で仕事をする際、認知症の中でも最も患者数の多いアルツハイマー型認知症については、よく理解しておくことは大変重要です。
アルツハイマー型認知症の病態
アルツハイマー型認知症は、精神科医でドイツ人のアルツハイマーが1906年に認知症の疾患として、その病状を発表しました。
脳の萎縮が発生しますが、これは大脳皮質にある神経細胞が徐々に減っていくことが原因となって起こります。
また、医学的な観点から見ると神経細胞の萎縮、老人斑、神経原線維変化が起こることがよく知られています。
アルツハイマー型認知症の症状
患者は、次の5つが症状として発現してきます。
記憶障害
再三一様の内容を何度も何度も声に出していて言う、ちょっと前の出来事を何処もかしこも忘失する、お願いされた内容をあっという間に忘れるなど、記憶低下は一歩一歩出現率が積み上がり、なお一層、認知障害へと繋がっていきます。
記憶低下に於いて、財布が盗まれたなどの被害妄想が頻発するようになります。
具体的に言うと、財布をタンスにしまった事実を忘れ、家族や介護士などに盗まれたと勝手に決めつけ、他人を疑い激しく批判するなどします。
また、記憶低下に随伴して不安感や抑うつなどの症状が現われてきます。
自分が経験したことや入手した情報を記憶に留めておけないので、認知症患者は、DVD動画を中途から視聴しているような不思議な感覚、周囲の出来事についていけない感覚、とっても重要な何かを忘れているのではないかなどの不安感を終始抱くようになります。
最悪なのは、自分の記憶が著しき衰えてきたことを他人にさとられないかという恐怖感が原因で、ひきこもり状態に陥るケースもあります。
遂行機能障害(思考と判断力の障害)
事柄を理解して的確な判断を行うことが認知機能が障害されることにより、正常に行えなくなります。
周囲に起こった出来事について考えたり、比較検討したりすること自体に困難が伴います。
何と言っても順序立ててひと通りの作業を行うのが最初の段階から行えなくなります。
具体的に言うと、調理を行うという作業も困難になります。
材料を用意し、適切な形状や大きさに切って、鍋やフライパンを使い、適切な時間をかけて調理した後に、好みの味つけを行い、お皿にきれいに盛りつけるなど順番に作業を進めていくということが、途中で理解できなくなりやめてしまいます。
見当識障害(失見当)
特に大きく社会生活に影響がでるのが、時間や場所について正常に判断できなくなることです。
- 時間の見当識:
今は何月何日何曜日なのか、現在何時なのか、春夏秋冬のいつの時期なのかなど、時間的観念についての認識が衰えます。 - 場所の見当識:
今自分はどの場所にいるのかという認識も衰え、買い物などに行っても迷子になったりします。 - 人物の見当識:
自分の家族や子供などと会っても、その人物が誰かすら認識出来なくなります。
人格の保持
認知機能が著しく衰えてきた場合でも、人格水準は大きく低下せず維持されていることが特徴と言われています。
特にアルツハイマー型認知症については、周囲の人や出来事とのかかわり方、言動や態度、人に対する応対力などは保たれています。
神経症状
筋肉の緊張が進み高まっていく状態や歩行障害が起こります。
最終的には、高度に認知症が進行し、自発性が失われ、寝たきり状態に陥り、発語もできない状態に至ります。
アルツハイマー型認知症状の進行状況
発症する時期ははっきりとはわからずとも、気がつかないあいだにもの忘れが進行し、徐々に進んでゆくのがアルツハイマー型認知症の特徴です。
- 軽度レベル:
記憶、時間の見当識、遂行機能などに障害が起こるのが特徴です。 - 中度レベル:
判断力や思考力が激しく低下し自分がいる場所も認識できなくなるのが特徴です。 - 高度レベル:
人物の認識力も低下し、身内や子供などの顔さえ認識判別することが不可能になります。
アルツハイマー型認知症の場合、認知機能の悪化進行は、一直線に衰えていくのではなく、あるレベルまで進行すると、一時的に安定する傾向にあります。
怪我や病気による医療機関への入院、介護施設への入居、引っ越しなど、生活環境が大きく変化することが切っ掛けとなって、際立って認知機能が衰えていく場合があります。
認知機能の悪化進行に伴って行動・心理症状(BPSD)も起こりますが、各段階においても特徴的な症状が発生します。