介護職による調理の援助とは
調理援助の目的
人の健康や生命を維持するために食に関する介護職などによる援助は大変重要な業務です。
調理は健康や生命を維持するための大切な行為として行われます。
調理援助という業務は、原則的に「本人の要望に合わせて、どのような食材をどう調理するか」ということが最優先に考えられていたので、介護職が行う仕事のなかでも「最も難しい業務」と認識されています。
食習慣や好き嫌いは個人により異なりますし、精神状態や健康状態に左右されやすく、現実的に調理は、個人の時々の状態・状況に合わせて行わなければならないからです。
介護職が行う調理援助は、なぜこの援助を行うのかという根拠や目的を考えて実施しており、単に私生活で食事をするために調理をするといった視点とは違った援助が必要になってきます。
また、介護職は調理援助を行う際に、下記のような内容を考慮したうえで調理を行い、利用者も調理に関われるようにコミュニケーションをとりながら援助していくことが求めらえます。
- 利用者が望む理想的な食形態は?
- 実際に食べているものは何か?
- 食事で不足している栄養素は何か?
- 好きな食べ物と嫌いな食べ物は何か?
- 薬との兼ね合いで控えるべき食べ物は何か?
- 最適な摂取カロリーは守られているか?
調理の流れと手順
介護職が実際に調理を行う際には、次のような順序で援助を行います。
- 調理をしよう考える
- 献立メニューを決定する
- 献立に必要な食材を決定する
- 買い物や宅配で食材を買い集める
- 食材の調理方法を決定する
- まな板・包丁・ピーラーなど調理器具を使い食材の下準備をする
- ガス器具・電気器具・プライパン・鍋などを使い焼く・茹でる・蒸すなど調理を行う
- 適切な調味料を選び味つけを行う
- 食器を選択し食材の盛りつけを行う
- テーブルなどに調理した食事を配膳する
- 食事を行う
- 食器などの下膳を行う
- 食器や調理器具などを洗う
- 食器や調理器具などを元の収納場所へ片付ける
食材と栄養素に関する基本知識
要介護者の状態に配慮した食材の効果的な活用
利用者が必要な栄養素を摂取できるようにするには、介護職は基本的な栄養素の知識を知っておくことは不可欠で、栄養素が身体のどの部分や機能にどう働きかけて影響するかということも理解しておくことが必要です。
なので、葛湯(くずゆ)など甘くて温かい高カロリー食品などを食べてもらうことで、体温上昇が期待できます。
これは、人間の生理機能に対しての炭水化物や糖分の影響力や効用に関して知っておくことで、利用者の健康状態を良くできる場合もあります。
介護職員初任者研修などの資格を取得して利用者宅へ訪問し、初めて調理援助などを行う時は、次のようなことに留意します。
また、利用者の咀嚼力、嚥下能力、歯の状態については、初めての場合、明確に把握できないので食材は小さめに切り本人に確認をするのが無難です。
- 在宅ではその場にあるは食材で調理する工夫を行う
- 利用者の好き嫌いに配慮した様々な調理法を理解しておく
- レトルト食品、保存食品を活用することも効果的
- 利用者の咀嚼力、嚥下能力を考慮した食形態にも留意する(刻み食、とろみ食、やわらか食など)
- 利用者の歯の状態により食材の硬さに注意する(食べ物をかみ切れない、歯にからみつくなどした場合は、もう少し硬めにして歯ごたえが残るようにするなど)
調理に於ける安全と保存
介護職が行う援助も介護も安全第一が基本原則ですし、調理援助を行う際には次のような安全配慮が不可欠です。
- 食中毒の予防
- 病気に配慮した調理法(高血圧、糖尿病など)
- 病気悪化予防のための服用薬による禁忌食を使用しない
特に食中毒予防のためには、次のようなことに注意が必要です。
- 徹底した手洗い
- 調理器具の洗浄・清潔保持
- 冷蔵庫や食材保存場所の清潔保持
- 季節に応じた食品の保存(冷蔵保存、冷凍保存、常温保存など)
一人暮らしをしている要援助者の方であれば、調理した食材は1食分づつに分けて冷凍保存し、冷凍した日付を記入して、古い食材が残らないようにします。