介護職員初任者研修をはじめとする介護職員は、認知症の初期段階にある高齢者などの特徴や身体的・精神的・行動に於ける変化内容をよく理解し介護現場で対応できるようにしておく必要があります。
結婚は27歳の時で、30歳で長女が誕生。
車部品を販売する会社で60歳定年まで勤務、再雇用で65歳まで勤務。
67歳になった年に妻が脳梗塞を患い看病を行ったが、1年前に死亡し現在まで一人で生活を送っている。
妻が死亡してからもの忘れが多くなり10kmほど離れた所にいる長女が、1週間に2回程度、身辺の世話を行いに通っている。
ハイキングが趣味で、ハイキングクラブの代表もしていたので、時々山野を歩きたいと周囲に言っている。
初期認知症高齢者の生活環境の特徴
認知症でも初期段階にある高齢者の場合は、通所介護(デイサービス)や訪問介護(ホームヘルプサービス)などの居宅サービスを利用し介護支援を受けながら自分の家で生活している方が大半です。
利用者が長年住み慣れた地域や自宅に訪問して,あらかじめ設定した日や時間帯に定期的に介護支援を継続して行えるという利点があります。
このような利点を活用し,生活援助(洗濯,掃除、買い物,調理等)を,自宅の状況や家族からの情報を参考にして、利用者自身の生活習慣を考慮しながら介護援助を行います。
認知症の初期段階であれば利用者自身の残存能力が十分活用できるので、本人が可能なことは自分自身で行うように援助を行い、一から十まで介護職が援助しないように,共通の援助方針を訪問介護計画で明確にしておきます。
利用者本人やその家族から今までの趣味や今後興味がありチャレンジしてみたいことなどの情報を集めておき通所介護を行う上で利用者がデイサービスで取り組めるようにしていくことも可能です。
利用者本人やその家族から話を聞いたりして情報を収集できない場合であっても,デイサービスの活動を通して,利用者が興味を持っていることやチャレンジしたいことが把握できる場合もあります。
初期認知症高齢者の初期段階における変化
利用者本人が何か物事を行うがかえって混乱したり、自分でできないことを隠したりする傾向が強くなります。具体的には次のような事例が挙げられます。
洗濯機の操作方法や手順を思い出せず,水だけで洗ってみたり洗濯物を干した後、夜になっても取り込まず放置していたりします。
部屋の整理をしようとした場合,どこに物を収納したか、どこに置いたかもわからなくなり,結局部屋中に物が散乱した状態になることもあります。
今日は何日か今は何時かなど時間の見当が正確に認識できず(時間失見当)、次のようなことが起こる可能性があります。
もう食べたのか、まだ食べていないのか見当がつかなくなり、食事を飛ばしたりして体重が減少し体調不良に陥ることもあります。
お茶やジュースなどもいつ飲んだのかわからなくなり,暑いときには脱水症状に陥ったり,便秘になったりする場合もあります。
暑い寒いなどの温度感覚が鈍感になり,時々の季節や天候や温度に見合った服装ができずに夏に厚着をしたり冬に薄着をしたりして、熱中症や風邪になったりする場合があります。
記憶障害によるもの忘れなどが頻発し,自信喪失で自分は何も満足にできないと考え込んで意欲をなくし,ふさぎ込むことが多くなってきます。
サービス業などに従事し以前は社交的な人でも人と会うことに緊張を覚え,表情も悪く閉鎖的になります。
自分から積極的に他人に接したり話しかけたりすることも少なくなり,自宅に閉じこもることが多くなってきます。
家族や近隣住民は、以前知っている本人とは違う別人になってしまったと感じる人が多くなります。