認知症と脳機能の関連性
介護職員初任者研修の有資格者として介護職に携わるには、認知症と脳機能の関連性などの基本知識を理解しておくことも大切です。
脳が果たしている機能
人は現実社会や日常生活上で遭遇する様々な出来事や事柄を正確に認識し、よりよい人生を送るために外界から得た情報を整理していますが、これは経験や知識として記憶に蓄積された情報に基づき都度最適な判断を下しているわけです。
知能や認知機能とは、このように情報を適切に処理できる能力を指し示しますが、脳がこれらの処理能力を担い日々休みなく働いているのです。
脳の構造と各部位の働き
人間の脳の中でも大脳と言われる部位が大半を占めており、左と右に大脳半球として分かれています。
外観上、脳にはしわが多く見られますが、内側に深く脳表面が折りたたまれているので、表面上はしわに見えているだけです。
頭蓋骨という器の中に脳はすっぽりと納まっているのですが、表面積という観点では、このしわを伸ばしていくとかなりの面積になります。
また脳表面には増大な数の神経細胞が存在していますが、認知症になると、この神経細胞が減少していくため、脳溝(しわに見えている部分)が広がってしまいます。
男性で1400g、女性で1250gというのが人間の脳の平均的な重さですが、認知症では脳が100g前後も減少し、重篤な場合は1000g以下に脳の重さが減少するケースもあるといわれています。
脳の神経細胞と主な4つの部位
脳の神経系は、中枢神経と末梢神経の2つに分類されます。
末梢神経は、連絡網の役割を果たしており、全身各部位から発せられる情報を瞬時に脳や脊髄に伝達し、その後中枢から返される指示内容を伝える働きをしています。
中枢神経は脳と脊髄より成り立っており、一つのネットワークとして神経細胞より構成されています。
この神経細胞数は140億個程度存在し、構成要素の最小単位にあたります。
末梢神経を通し全身各部位からフィードバックされた情報と、今までに蓄積された記憶などと照合し、適切に判断し指示・命令を行う役割を中枢神経が果たしています。
脳を大きく分けると、前頭葉、頭頂葉、側頭葉、後頭葉の4部位に分類することができます。
また、大脳表面にある大脳皮質は数ミリ厚の層を形成しており、この部位には多くの脳神経細胞が集まっています。
特に脳全体の約4割が大脳の前部に存在する前頭葉が占めていますが、ここは人が大きく発達させた脳機能の部分になります。
前頭前野は前頭葉の前方部に存在しますが、ここは大局的に物事を考えたり、判断を下す機能を果たしています。
頭頂葉と前頭葉との境目にある溝を中心にして、後方を知覚領野、前方を運動領野と呼びます。
頭頂葉は、手足を使用して様々なことを行う運動機能の役割を果たしています。
側頭葉では、記憶と物事を認知する視覚領野が存在しています。
側頭葉の中には海馬と呼ばれる神経細胞が集中していて記憶を司っていますが、海馬に障害が起こると、記憶能力に支障が生じます。
以上のように脳は、4つに分かれて各機能を担っています。
老化により脳はどう変化するのか?
脳神経細胞の老化とは
年とともに高齢になると徐々に神経細胞が減るため、共に脳重量も減っていきます。
健康体であっても80歳頃になれば100g程度は重量が減るといわれています。
神経細胞は、赤ちゃんの頃は140億個程度存在していますが、それ後、年齢を重ねるとともに日に約10万個も減り続けていきます。
特に老年期になると神経細胞数が減少し脳の萎縮が起こり始めますが、体内での情報をやり取りする樹状突起は成長を続け、枝葉のようにネットワークが形成されていきます。
神経細胞の減少をカバーするための自己防衛機能が人には備わっているようです。
老年期にある高齢者の場合、老人斑という脳に染みがあるように見える現象が発生しますが、これは異常アミロイドβたんぱく質が一つに集まり固まることが原因です。
さらに神経細胞にも、タウ物質から成り立っているアルツハイマー原綿維変化と言われる異常物質構造が発現してきますが、健康体の脳でも側頭葉の海馬などに一部存在します。
しかし、アルツハイマー型認知症の場合、脳全体にこの物質が現れて神経細胞が壊されていくことで発症し症状が進んでいきます。
脳血管の老化とは
脳血管が老化することで、脳全体の老化は進んでいきます。
脳血管内で動脈硬化が発生するのは、メタボリック症候群、いわゆる高血圧・糖尿病・脂質異常症・肥満などが大きな引き金となります。
コレステロールなどが脳の細い血管内に沈着することで血管が狭まります。
すると、栄養や酸素を神経細胞に届けるための血液循環が阻害され、最終的に脳機能が衰え、ますます脳の老化を推し進めることにつながっていきます。
最悪の場合、脳出血や脳梗塞が発症し認知症の大きな要因となってしまいます。