介護ヘルパーができる医療行為とは
介護現場の仕事で、どこまでするかの線引きで悩むこととしては、医療行為にあたるかどうか判断しずらい場合の対応があります。
特に病気や老衰で寝たきり状態などにある利用者の場合、介護士は家族から次のようなことを手助けしてほしと要望されることも有ります。
- 点滴の刺針・抜針
点滴を行う際、針を刺したり抜いたり行為のことです。 - 褥瘡(床ずれ)のケア
褥瘡は同じ姿勢で長期間寝ていると、体の特定部分が圧迫され血夜循環が阻害されて細胞組織が壊死する状態をいいますが、特にお尻やかかと部分に多く発生します。予防策としては、こまめな寝返り(体位交換)、皮膚の清潔保持、適切な栄養摂取が必要です。
- 経管栄養
流動食の栄養剤を鼻から胃ヘチューブを通して補給することです。 - 痰の吸引
痰の吸引器を使用して、口や鼻からチューブを挿入して滞留した痰を吸引除去することです。
また、家族に頼まれるだけでなく利用者が目の前で、のどに痰が詰まり息苦しい場合や褥瘡で痛がっている場合などは、どうしたらよいか悩む介護士も多くいますが、このような医療行為について介護士が行うことは従来できませんでした。
これは、利用者の身体を傷つけることも考えられるので、処置は医師や看護師のみが行えることとなっていました。
しかし、在宅介護サービスが重視され始め1990年代以降、重い病状を抱えた利用者が増加してきたことで、従来は在宅介護サービスも家事援助が主でしたが、徐々に身体介護へ重点が置かれるようになっていきました。
その結果、家族や介護ヘルパーがなんらかの条件の元で一部の医療行為を行うことが必要な状況が増えていきましたが、当時、医療行為について法整備がされておらず制度上も不明確で、厚生労働省や介護現場でも、どこで線引きしたらいいのか判断に迷っていました。
その後、紆余曲折がありましたが、現在では介護職員実務者研修でも医療的ケア研修が導入され、この研修と実地研修を受講修了すれば、医師の指示に従い経管栄養と痰吸引を行うことが可能になっています。
その他介護士ができる医療行為については次のページで詳しく解説しています。
身体介護に対する介護士と看護師のアプローチの違い
身体介護を行う場合、介護士と看護師では仕事の目的や成り立ちを見ていくと役割や関わり方が異なってきます。
介護士・ホームヘルパーの場合は、利用者の生活全体に関わり手助けしていきますが、看護師の場合は、利用者の心や体そのものと向き合い対処していくことになります。
例を挙げると、褥瘡のケアに関しては、介護士・ホームヘルパーの場合は、皮膚に優しい材質や形状を考慮して衣服を選択したり、こまめに寝返りなどの体位交換を行ったり、食事内容を考え体質改善を行うなど、利用者が褥瘡にならないように予防することが主な仕事の目的になります。
一方、看護師の仕事は、褥瘡のガーゼを交換したり薬を塗布したりするのが主になります。
介護ヘルパーは、医療行為を行う医師や看護師を違う側面から援助できるように介護技能を存分に発揮することで、利用者にとって有益な介護を行うことが可能になります。
よって、医療行為を自分がすべきかすべきでないかなどを、介護現場で悩むのではなく、他の医療従事者や福祉スタッフとも連携して、できないことは協力を求めながら、いかに安全で適切な介護を利用者に提供できるかを考慮し業務を行うことが重要です。