介護職が理解しておきたい高齢者の日常的な疾患と対処法
介護を受けている高齢者は、体力的にも弱っている方も多く、ちょっとした風邪がきっかけで寝たきりになってしまうケースもあり、発熱が続くと税水状態になる場合があります。
また、高齢者は動作が鈍くなりがちで、つまづいたり、ふらついたりして、打撲や捻挫をすることも増えてくるので、介護者は日常から注意をはらい未然防止に努めることが大切です。
高齢者の風邪は注意が必要
要介護状態の高齢者は体力や抵抗力が弱っている方が多く、健常者であればすぐ回復する程度の風邪であっても、放置しておくと致命傷になる場合があるので、介護者は注意する必要があり軽視は禁物です。
ちょっとした風邪から肺炎を発症したり、寝込んでしまったのが原因で、寝たきり状態にまで重篤化してしまうケースも少なくありません。
高齢者が風邪をひく原因は、体力低下に伴う免疫力の低下、季節の変わり目などの大きな気温の寒暖差などが挙げられます。
発熱・くしゃみ・咳・頭痛などの症状がでた場合、一時的に薬で抑えることは可能ですが、風邪の多くの原因であるウイルス自体を完全に抑制する抗ウイルス薬は現在存在しません。
なので、基礎体力を高め免疫力をアップさせることが大切になります。
身体介護や家事援助に携わるホームヘルパーや介護職員は、利用者と接する際に、自分が風邪をひいていたり、外部から風邪を持ち込んだりしないよう細心の注意が必要です。
そのためには、外出や帰宅時に、手洗いやうがいを励行し、十分な睡眠や栄養バランスの摂れた食事、適度な運動など、生活リズムを正し抵抗力を高める努力も必要です。
高齢者が肺炎になる原因
風邪や誤嚥が原因で高齢者が肺炎になることが多く、元々、口腔内には細菌が多いので不潔にしていると、誤嚥で食べ物などが肺に入った時に細菌も一緒に入り込み重篤な肺炎になる場合があります。
特に高齢者は口の中を清潔にすることは、快適面と共に肺炎防止の観点からも重要です。
肺機能に異常をきたすと、酸素不足に陥り、爪や唇の血色が悪くなり、呼吸困難で死亡するケースもあり得るため、高熱や呼吸過多の症状が確認できる場合、介護職には利用者をすぐに病院に連れていくなどの対処が求められます。
高齢者の発熱原因と対処法
肺炎・食中毒・風邪 など、高齢者が発熱する原因は様々な要因が考えられ、高熱をだすと体力を奪われるため適切な方法で解熱する必要があります。
相対的に高齢者は低い平熱の方が多く、体温の変動も少ないので、発熱した場合は平熱と比較して判断するのがポイントです。
医師の指示のもと、適正な方法で熱を下げることが大切ですが、介護職ができる解熱には次の方法があります。
- 気化熱を奪い体温を下げるために発汗を促す。
- 体の熱を奪うために冷タオルなどで皮膚を冷やす。
- 解熱薬を使用する。
高齢者が脱水症状を起こすと大きな体力負担となるため、適度な水分と栄養の補給を心がけるようにします。
また、脱水症状がひどい場合は意識混濁に陥り、認知症と勘違いするケースもあり、冷静に見極める必要があります。
高齢者の捻挫や打撲の原因
高齢者は、老化により筋肉の柔軟性がなくなり関節の軟骨がすり減るなどして、全身の動作が鈍くなり、段差につまずいたり障害物を避け切れなかったりして、捻挫や打撲することが多くなります。
さらに皮膚が乾燥しやすくハリや弾力性がなくなるので、すぐ皮膚表面が傷つき治りも遅くなります。
介護職が理解しておきたい感染症とその予防
ウイルスによる代表的な感染の種類と概要
ウイルス感染症 | 感染経路 | 内容 |
A型肝炎 | 食品・飲料水を介して感染 |
発病は急激に起こるが原則慢性化はしない。 |
B型肝炎 | 輸血による血液感染、母子感染 |
ウイルス保菌者でも未発症のケースが多く、自分では気づかずに2次感染させる事例もある。 母子感染防止用のワクチンはある。 |
C型肝炎 | 血液感染 | 肝硬変や肝臓ガンまで慢性化して進行する場合がある。 |
AIDS (後天性免疫不全症候群) |
輸血、血液製剤、母子感染、注射針共用、性行為により感染 |
リンパ球にHIV(ヒト免疫不全ウイルス)が感染し、免疫機能を低下させる病気。 現在、発症を抑制させるワクチンはある。 |
細菌による代表的な感染の種類と概要
ウイルス感染症 | 感染経路 | 内容 |
結核 | 空気感染、 飛沫核感染 |
継続しただるさ、微熱、血痰などの症状が現れる。 咳などにより飛沫感染するので、介護職が保菌者でも健康な場合は発症しない事もあり、利用者に感染させる可能性もあるので、胸部レントゲン検査や痰検査も必要。 |
MRSA (メシチリン耐性黄色ブドウ球菌) |
接触感染 |
この菌の病原性は弱いがどこにでも存在し、健康であれば発病には至らないが、抵抗力が衰えている方が感染すると、有効な抗生物質がなく重篤な病状に陥りやく危険性が高い。 |
ダニによる代表的な感染の種類と概要
ウイルス感染症 | 感染経路 | 内容 |
疥癬 | 皮膚接触感染 |
ヒゼンダニによる皮膚疾患の一種。 あせもと似た細かいブツブツが肌に表れ、ひどいかゆみを伴い、夜間に症状がひどくなるため、必ず皮膚科の受診と医師による処方が必要。 |
感染予防の留意点と予防法
介護職は感染予防に十分注意して介護を行う必要があります。
感染予防の大原則は、「病原体を、もらわない、もち出さない、もち込まない」の3つですが、感染予防には、下記の点に留意する必要があります。
- 周囲への感染予防: 介護者・家族などへ感染防止
- 2次感染予防: 他への感染経路にならない
また、次のような点に留意するのも感染予防に役立ちます。
- 訪問前と後には、必ず手洗いを行う。
- 髪は束ねて布で覆い、エプロンを付けて作業する。
- 直に血液や分泌物には触れず作業後は手洗いを励行する。
- 切り傷や擦り傷が手や指にある時は、ゴム手袋を装着する。
- 介護業務終了後、使用したエプロンと髪を覆った布は表側を内にしてたたみ込んでビニール袋に保管し、同一日に続けて訪問先がある場合は別のエプロンを使用し、同じエプロンを使い回さない。