介護職員初任者研修の有資格者が要介護者の食事介助を行う際、食事の時間になっても食べない利用者もいますが、ここでは、なぜ食べないかの理由とその対処法を探っていきます。
食欲不振の場合の原因と介護職としての対処法
理由1:お腹がすいていない
特に体調がすぐれないわけでもないのに、食事時間になっても空腹でなく食べたくないというケースは多くの人が普通に体験することです。
こんな時、介護職は、どう対処するのが適切でしょうか。
答えは単純で、利用者が空腹になるまで待つしかありません。
また、身体を動かすことによって自然とお腹がすき、食べたくなってきますので、デイサービスで提供されているレクレーションなどに参加してもらい、軽く体を動かすように導いてあげましょう。
実際の体験として飛行機に搭乗した時など、何回も食事サービスが提供されて、うんざりした方もいると思いますが、介護施設や医療機関でも同じようなことを経験している方も少なくはありません。
毎日栄養バランスの考えられた食事や、全員同じ食事を摂る必要はありません。
介護職は、おそばがすきな利用者にはその日だけおそばにしてあげるなどの特別扱いを行うことも時には必要になってきます。
理由2:食欲がわかない
- 出前を注文する:利用者が好きな食べ物を出前注文したところ、目先が変化しむしょうに食欲が湧き出たということもあります。
- 外食に出かける:歩行器で歩ける方や車イスの方でも近隣の飲食店・レストランなどに出かけるだけでも、普段とは雰囲気が様変わりし食欲が湧き出る場合があります。
最近では車イスOKの飲食店も多くなってきました。
- 食事会を行う:デイセンターなどでは、各種イベントや誕生日の食事会、年末の忘年会など、比較的多くの食事機会があります。
利用者が食欲不振に陥る場合は、病気である徴候も否定できません。
食欲がわくようにいろいろ考え工夫し食事を用意しても食べない場合、医療機関を受診し医師に相談することも検討する必要があります。
中でも認知症高齢者の場合は要注意です。
また、精神的なストレスが原因で食欲不振になるケースもあり得ますので、レクリエーションなどに参加してもらいストレス発散できる場を提供したり、家族との面会が適切に行われているか確認するのも大切です。
高齢になると何の理由や原因もなく生きることへの気力や意欲がフッーと減退することがあり、食欲不振という現象になり表面化してきます。
自殺をしないまでも心が死んでいる状態です。
このような方には、「旅行してみたい場所は?」「一番会いたい方は?」と質問してあげて下さい。
本人が希望すれば介護職は、その願いを実現するように援助してあげてください。
生きる気力や意欲が衰えている状態を介護職が外見から発見するには、次の点に注意します。
- 笑顔がなくなり無表情になる
- 目にハリがなくなる
- 死にたい、生きるのが辛い、楽しくない、私なんか生きていても……などと口走るようになる
- 食欲がなく食べないことが多い
手が上手く動かない場合の介護職としての対処法
介護職員初任者研修の有資格者として食事介助を行う場合、障害などの原因で手をスムーズに動かせず上手く食事が出来ない利用者も少なくありません。
このような場合は、便利な介助用具を使用することで楽に食べることができるようになります。
- 箸蔵くん:
グリップを握れば手の形になじみ、握る伸ばすという動作も軽くできシンプルに指を動かすだけで、簡単に食品をつまむことが可能な箸です。 - らくらく箸:
手の大きさにフィットするように大小の種類があり、握力が強くない方でも力を上手に入れることが可能な箸です。
関節の動きが不自由な人でも使用しやすい角度に柄の部分を自在に曲げることができるスプーン・フォークがあります。
木製の柄の部分にスポンジがセットされ握力の弱い方でも握りやすいように工夫されています。
食事の際にストレスなく食べるためには
手を自由に動かせないという理由から食事を摂りたがらないという要介護者も少なくありません。
本人が右利きなのに麻痺が右手にある場合、左手で食事をしたり文章を書いたりする「利き手交換」という訓練を行います。
ですが、実際にお箸を使用する場合には指先の微妙な動きを要するため、運動神経が衰えている高齢者の方はストレスが溜まることが多いといわれています。
食事とは楽しみの場であるはずが、リハビリ訓練を行っているような場に陥ってしまうと、おいしく食事を摂ることができません。
現在は便利な介助用具が多く市販されており、手や指をスムーズに動かせない方でもストレスなく使用できるように開発された箸・スプーン・フォークが提供されています。
介護職は、このような介助用具を適切に利用し、要介護者のストレスを軽減できるようにしましょう。
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