利用者との感情のズレ対処法

利用者とのコミュニケーションを円滑にし、感情の溝を埋める

 介護の仕事に就く前の心構えについて説明してきましが、いくら準備万端にしていても、予期せぬ不測の事態に遭遇することがあります。

このページでは、そのような場面に出くわした場合の対処の仕方について考えてみましょう。

第一印象に配慮して訪問先の家に上がる

 介護の仕事に就いて、第一に想定できるのが、利用者との感情的なもめ事です。

利用者も人間ですから、感情的ないさかいが起こる原因として次のようなことが考えられます。

  • 虫の居所が悪い
  • 担当ホームヘルパー・介護士などと相性が合わない
  • 対人関係が苦手で、自宅に他人が上がること自体快く思っていない

利用者の中でも要望が多い方については、前任ホームヘルパーやケアマネジャーから引き継ぎなどで、伝達されることになるはずです。

 しかし、「たまたま虫の居所が悪い」「相性が合わない」などのケースは、介護士・ホームヘルパー自身がどう対応していくかにかかっています。

まず基本は第一印象が重要で、明るくしっかりとした口調で訪問先に着いたら挨拶を行うようにしましょう。

挨拶は、温かさや柔らかさが大切で利用者が心を開きやすい口調でしゃべりましょう。

単に大きな声で元気よく挨拶したらいいというものではありません。

挨拶した後、無断で家に上がるのは禁物で、「どうぞ」という利用者の声を聞いてから靴を脱いで上がるようにします。

訪問先に家族も不在で利用者の声もない場合は、こちらから「上がらせて頂きます」と声をかけ、もちろん穏やかな表情で上がるようにしましょう。

利用者の反応状態のチェック項目

順序

介護士・ヘルパーの言動

利用者の反応の仕方

表情や身だしなみを訪問前に手鏡等でチェックしておく  ―

柔らかく暖かい口調はで挨拶をする
  • 挨拶を返してくれるか?
  • 最初に顔を合わせた時の表情は?

利用者の気分や状態を尋ねる
  • 受け答えをきちんとしているか?
  • 顔色、表情、機嫌はどうか?

利用者の機嫌が悪い場合は雑談などで軽くすませる
  • 利用者の体調を会話をしながら観察
  • 表情や反応は話題によって変化があるか?
  • 特に相談事などはないか?

介護業務を始める
  • 「〜をします」と声掛けをした際の反応は?
  • 何か特別の指示等はあるか?

介護中
  • 作業を行いながら様子を常にチェック
  • 様子が急に変わったりすることはないか?

介護業務終了
  • 「作業が終了したこと」を伝えた時の反応は?
  • 訪問時と今と比べて表情などに変化はあるか?
  • 「ご苦労様」「お疲れ様」などの声をかけてくれるか?

次回の訪問予定日を帰り際に利用者に告げる
  • 新たな要望等はないか?
  • 極端に寂しがったりしないか?
  • 「もう来なくていい」などの文句や不満を言っていないか?

時間を取り利用者の気分がほぐれるような話題を選んで会話する

 挨拶をして家に上がったら、最初に利用者の気分や状態について尋ねてみましょう。

利用者の機嫌が悪かったり、気分がよくない場合でも、気分がほぐれるような軽い雑談などをしながら、体調調などを観察しましょう。

雑談についても、訪問前に気分がほぐれるような話題をニュースや新聞などを参考に用意しておくと楽です。

 但し、利用者の状況により、気分を害してしまう話題もあるので、利用者自身の情報を参考に話題を考慮することも大切です。

脚が悪く外出が困難な人に、「外の景色はきれいで・・・」などの話しをするというようなことは避けるべきです。

 また、介護士・ホームヘルパーが家に上がったり、介護されることを嫌がるという極端な利用者もいます。

その場合は、利用者の目線まで腰を落とし、話をそらしながら興味を示すような話題で話すようにしてみましょう。

新人ホームヘルパーの場合、訪問初日などに利用者から拒絶反応を示されると、自信を失くし落ち込んだり、パニックになるケースも少なくありませんが、慌てず冷静に対応しましょう。

最初は初対面ということもあり、会話も噛み合いませんが、日が経つにつれ徐々に穏やかになり、時間が経過すると心を開いてくれるケースがほとんどです。

お互い心を開き信頼し合える関係になるには、「時間もある程度必要」だという事が理解できれば、じっくり腰を据えて冷静に対処できるようになります。

自分で対処出来ない場合は、悩まず事業所に状況報告する

 いろいろ努力しても利用者から「もう来なくてもいい」などと罵られ、心を開いてくれず、どうしてもその理由がわからない場合もあります。

そういう時は、自分一人で悩みを抱え込まず、できるだけ多くの人の意見を聞くことで、対処法を見つけることもできます。

まず、自分が行った行動や話題にした会話内容、その時の利用者の反応などを詳しく書き出し、事業所へ報告書を提出し、同時に口頭でも報告することです。

その報告内容によっては、利用者宅へケアマネジャーや上司訪問し、第三者として本音を聞き出す場合もあります。

 ここまで事業所としてフォローしても利用者との感情のいさかいが修復できない場合は、担当ホームヘルパーを交代させるという処置をとるケースもあります。

しかし、交代させられたからといって、ホームヘルパー自身の責任でない場合も多くあり、反省すべきことは反省しつつ、「自分に対応できるスキルがない」などと落ち込んだり、自分を責め自信を無くしたりする必要はありません。

 結局、感情の溝を解消したり、利用者に心を開いてもらうのは、基本的に介護事業者・ホームヘルパー・利用者の間で、いかにコミュニケーションを円滑に行うかに尽きるとも言えます。

ところが、介護保険が施行されてからは、次のような状況により利用者と十分なコミュニケーションがとれないという声も聞きます。

  • 訪問時間に制限があるので利用者とじっくり会話する機会がない
  • 介護業務の効率化を図る事業所では、ホームヘルパーの個人的相談にじっくりと対処してくれない
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